2019年4月  4.エボラ出血熱
 教皇の今月の意向は、「人々の生命を救うため死の危険にさらされている医師や医療従事者のために祈る」ことです。医療活動のために死にさらされている現場は戦場だけではありません。ウイルス感染症の一つであるエボラ出血熱の治療に当たる人々は、自ら感染する危険を冒しながら、患者と接しています。
 初めてこのウイルスが発見されたのは1976年6月でした。南スーダンのヌザラという町で、ある男性が急に39度の高熱と頭や腹部の痛みを感じて入院した後、消化器や鼻から激しく出血して死亡しました。その後、その男性の近くにいた2人も同様に発症して、それを発端に血液や医療器具を通して感染が広がり、最終的に感染者数284人、死亡者数151人にも発展したのでした。この最初の男性の出身地付近を流れるザイールのエボラ川の名をとってエボラウイルスと名づけられ、病気もエボラ出血熱と名づけられました。その後エボラ出血熱はアフリカ大陸で10回、突発的に発生・流行しています。この感染症は、致死率の高さが特徴で、20%から最高で90%程度に達することもあるため感染地域の住民に大きな恐怖心を与えています。
 2019年になっても、コンゴ民主共和国の北東部での流行が収まっていません。これまで感染した患者は619人で、このうち死者は361人にのぼりました。コンゴでの史上2番目の流行です。そして2月には、患者の治療センターが正体不明の暴徒に襲撃されました。地域への感染の拡大を恐れた住民の反発とも考えられています。医療従事者への感染も過去には何件か記録されています
 このようななかで、医療従事者たちは、感染を防ぐために全身を保護する特別な服装で身を固めて治療にあったっているのです。人類にとって未知の領域の一つであるウイルス性感染症との戦いの現場は、戦場と同じでまさに命懸けであることが理解されます。
 感染した患者が命を落とすことなく回復に向かうことができるようにと、祈りましょう。そしてまた、治療にあたっている医療従事者の心身の健康が守られ、一人でも多くの患者の命を救うことができるようにと心を合わせて祈ってまいりましょう。