2019年5月  1.エスノセントリズムを超えて
 教皇はこの数年、「きょうをささげる」の福音宣教の意向として毎年アフリカを取り上げてきました。2016年4月には「アフリカのキリスト者」、2017年5月には「アフリカのキリスト者たち」、そして2018年9月には「アフリカの若者たち」のために祈るように、勧めいていました。それぞれの機会に、このサイトでもアフリカの状況をできるだけ分かりやすく伝えようと努めて参りました。(このサイトでバックナンバーがご覧になれます)
 今月の意向にもアフリカが取り上げられていますが、これまでと少しニュアンスが異なります。これまではアフリカで暮らす人々のために、心を合わせて祈ることが主なねらいでした。ところが今年は、アフリカの人たちのなかに生まれた「和解と一致」が、正義と平和の実現のための「からし種」となるようにとの意向として表現されているのです。
 私たちは、互いに愛し合うことを第一の掟としています。敵さえも愛するようにとの教えを生きています。その愛はアガペーの愛で、キリスト教が初めて日本に伝えられたときには「愛」とは表現せず「ご大切」と訳していました。一人ひとりは神によって創られた傑作であり、どのような人でも大切なものとして尊敬の念をもってかかわるようにとの教えです。そのためにはまず、相手の人格を尊重すること、そして、人間としての弱さによって引き起こされた過ちをゆるすことです。この生き方が広まっていけば、和解と一致が実現されて、そこには平和な日々がめぐってきます。
 アフリカはまさに多様性の宝庫とも言えるでしょう。人種、民族、宗教がそれぞれ異なっている状況の中で、陥りやすい過ちの一つにエスノセントリズムがあります。自民族中心主義、自文化中心主義とも呼ばれ、自分の育ってきたエスニック集団(族群)、民族、人種の文化を基準として他の文化を否定的に判断したり、低く評価したりする態度や思想のことをさします。アフリカは今、その過ちに気づいて、一致に向けて歩みを始めています。
 教皇の意向のように「アフリカの教会が、人々の一致のためのからし種となり、大陸の希望のしるしとなることができますように」ともに祈りをささげてまいりましょう。