2019年5月  2.「組」という人の輪
 同世代の子どもが一つのグループとして学校での学習の単位となっている状況を、「クラス」と表すことがありますが、日本語ではそれを「組」と表現しています。なぜ、幼稚園での「ほし組」や「さくら組」、そして小学校では「1年1組」のように、子どもたちの集団が、「組」と呼ばれているのでしょうか。
 「組」は、糸がより合わさって紐になった状態を指しています。そこから、 同じ類のいくつかのものが集まって一そろいになっているものを表す言葉となり、そして 同じ目的で行動をともにする人の集まりを指す言葉としても使われるようになりました。
 昨年夏に、長崎の潜伏キリシタンとその関連施設がユネスコの世界文化遺産に登録されましたが、キリシタンの時代に信徒は「組」という名前のグループに所属して、日々の信仰生活を分かち合っていました。「さんたまりあの組」、「ご聖体の組」、「ミゼリコルディア(慈悲)の組」などがありましたが、この時の「組」は当時ヨーロッパで営まれていた信徒の運動「コンフラリア」、イタリア語の「コンフラテルニタス」の訳語として用いられました。今日では「共同体」と訳されている人々の集まりを、その時代には見事に「組」と表現したのでした。
 「組」は単なる人の集合体ではありません。そこに所属する一人ひとりが互いに人格的な交わりをもち、同じ目的に向かっていのちを分かち合う人の輪なのです。江戸時代の「火消し」は「め組」などと呼ばれ、息の合った活動をなしたのです。
 さて、日本の教会は今月の意向として、「子どもの健全な成長」を取り上げ、「子どもたちの心と体の健全な成長のために惜しみなく愛情が注がれ、豊かな人格形成のために教育や社会制度の改善、子どもたちを取りまく環境の整備を進めていくことができますように」祈ることを勧めています。子どもは、人格的な交わりの中で成長していきます。一人ひとりの子どもが、「組」の中で互いに人格的な出会いを重ねて成長できるように、クラスが単なる人の集まりではなく「組」として育てられていくことができるように、子どもたちを見守って参りましょう。