2019年5月  4.モンテッソーリ教育と自主性
 日本の教会は今月の意向として「子どもの健全な成長」をとりあげて、「豊かな人格形成のために教育の改善」がなされるように祈ることを勧めています。子どもの教育に教会が大きく貢献していることの一つに、モンテッソーリ教育を挙げることができます。今週は、その教育法のめざすところを理解し、その精神が広く子どもの教育に応用されるようにと祈ってまいりましょう。
 モンテッソーリ教育とは、20世紀の初頭に感覚教育法を施し知的水準を上げるという効果を見せて、知的障害児の成長に貢献したことで知られるイタリアのローマの医師であり、教育家でもあったマリア・モンテッソーリからその名が取られています。モンテッソーリ医師は、独特の教具を開発しました。教具の形、大きさはもとより、手触り、重さ、材質にまでこだわり、子どもたちの繊細な五感をやわらかく刺激するよう配慮がなされています。また、教具を通し、暗記でなく経験に基づいて質量や数量の感覚を養うことと、同時に教具を通して感じ取れる形容詞などの言語教育も組み込まれています。この教育法を取り入れた施設を「子どもの家」と呼び、瞬く間に欧米を中心に世界各国に広がりました。
 モンテッソーリ教育では、子どもの中の自発性を重んじることが、感覚教育と同じくらい大切にされています。どの子どもも持っている知的好奇心は、何よりその自発性が尊重されるべきで、周囲の大人はこの知的好奇心が自発的に現われるよう、子どもに「自由な環境」を提供することを大切だと説きました。また、子どもを観察するうち月齢、年齢ごとに子どもたちの興味の対象が変わっていくことに着目し、脳生理学に基づき、さまざまな能力の獲得には、それぞれ最適な時期があると結論付け、これを「敏感期」と名づけ、学齢の同じクラス運営の一斉教育を行わないで、例えば縦割りのクラスにするなど「自由」の保障と「敏感期」を育むモンテッソーリ理論の基礎を組み立てました。
 教具を取りそろえてモンテッソーリ教育の「子どもの家」を営むには、それなりの設備とそれを運営する組織が必要となりますが、モンテッソーリ教育が大切にしている自主性の尊重は、子どもたちと接するいかなる場面においても、実施可能なことです。子どもたちは大人の思うとおりには動いてくれません。ですから大人は、大人の思うように子どもが動いてほしくて、知らず知らずのうちの子どもの自主性を阻害しているのです。
 今週は、子どもの自主性を育むことに意識を集中して、子どもと接する場面で子ども自らの気づきを大切にしてまいりましょう。また、意向にあるように、「子どもの健全な成長」のために祈りをささげてまいりましょう。