2019年5月  5.アフリカの貧困
 国際通貨基金(IMF)が昨年公表した1人当たりの購買力平価(PPP)ベースのGDP(国内総生産)によると、戦争と飢饉によって荒廃したアフリカの国々は、世界で最も貧しい国であり続けています。PPPでは、各国の生活水準を比較するため、相対的な生活費とインフレ率を計算に入れていますが、ランキングの上位にあがるのは、汚職がまん延する独裁政権下にある国々です。最貧国20位の中にアフリカの国が15カ国を閉め、1人当たりのPPPベースの1日当たりの国内総生産が最も低い国は南スーダンで、その額はわずか74円(1米ドル=110円換算で)にしかなりません。13位のトーゴでやっと200円を超える金額になり、その貧しさの程度がかなり深刻であることが分かります。
 それらの国々には膨大な天然資源があって、本来豊かな国であるべきなのです。この貧困の原因はどこにあるのでしょうか。大きく七つの要素を挙げることができるでしょう。第一は教育、第二は健康です。子どもたちが教育を受ける機会に恵まれず、識字率も低い状況が続いていますし、衛生的な生活環境が整っていないために健康状態もよくありません。貧困が貧困を再生産する悪循環があります。第三は内戦とテロです。争いは破壊を伴います。せっかく整備した生活インフラを一瞬のうちに無に帰してしまいます。第四は汚職です。賄賂を渡して有利な問題解決をしようとする傾向は、貧しさに比例するとも言われています。法の遵守を監視する役割にある警察が、この汚職の体質から抜け出せないことも事実です。
 第五の要素は、国際的な援助にあるといわれています。貧しさをその場限りの援助で克服することはできません。援助がなくなれば、再び貧困に立ち戻ってしまいます。もちろん、飢餓を救済するための食糧の緊急援助は必要ですが、人々が自立・自活するためには、援助の方法に知恵を働かせる必要があります。
 第六は地理的環境に起因するものです。特に大陸の中央部に位置する国々は、経済的に不利な条件にあります。そして第七の要素は、貿易における不利な条件といわれています。国際経済の領域では、資本主義の競争原理が何の制限もなく働いて、富める国がますます豊かになり、貧しい国が一層貧しくなるといった状況が進行します。ですから、一国の中では資本主義を制御するさまざまな税や社会保障制度がありますが、国際経済ではあからさまな競争原理しか働かないのです。
 アフリカの貧困の要素を概観しましたが、私たちは知恵を出し合ってこの状況を改善しなければなりません。教皇は福音宣教の意向で「アフリカの教会」をとりあげて、人々の一致のからし種となることを願っています。七つのどの要素を取り上げても、その根底に一人ひとりを大切にする愛の精神が必要であることが理解されるでしょう。
 アフリカを貧困から脱却させるために、私たち一人ひとりに何ができるのかを思い巡らす一週間といたしましょう。