2019年6月  1.差別のない社会
 今月の日本の教会の意向は、「差別のない社会」の実現です。まず私たちが、「いわれのない差別によって苦しんでいる人々の心の痛みを受けとめ」ることが、その第一歩であるのでしょう。そこで思い浮かぶのが、「隣人を自分のように愛しなさい」(マタイ22・39)と言われたイエスの教えです。どのような状況の下でも、目の前に現れた一人ひとりを大切に思い、人として尊重して接する姿です。
 また、イエスは「心を尽くし、精神を尽くし、思いを尽くして、あなたの神である主を愛しなさい。」(マタイ22・37)とも言われ、この二つが重要な掟だと述べています。神への愛と隣人への愛は、決して別々のものではなく、本質的には一つです。神は、時間と空間を超えて、「いつでも」、「どこでも」、「だれとでも」、共にいてくださる存在ですから、私たちと共にいてくださる神を愛することは、その人を愛することと同じだからです。また、「目に見える兄弟を愛さない者は、目に見えない神を愛することができません。神を愛する人は、兄弟をも愛すべきです」(一ヨハネ4・20-21)と聖書に記されているとおりです。

 イエスの教えが一人ひとりを回心に導き、世の中で実現されれば、差別はなくなるでしょう。しかし、現実にはほど遠い状況と言わざるをえません。世界に目を向ければ、多くの移民、難民を生み出す社会、横暴な権力者を生み出す政治がはびこり、戦争やテロ等では、罪のない人々が抑圧され、苦しんでいます。
 私たちの身近な周辺でも、差別によって孤立され、苦しんでいる人々がおられるはずです。
 私たちが無意識のうちに差別を助長していないか、言葉によってではなくても、その心の動きに気づけますように、主に願い、祈って参りましょう。そして、苦しんでいる周りの人々の小さな息づかいにも気づけるように、そして、その心の痛みを受け止めることができますように祈る一週間と致しましょう。