2019年7月  4.帰還困難区域
 この言葉は、東京電力福島第一原発事故を受けて、政府が福島県内に設けた避難指示区域の一つの名称です。帰還困難区域は年間に換算した放射線量が50ミリシーベルトを超えていた区域で、政府が立ち入りを原則禁止しています。ここで暮らしていたすべての人は、家や田畑、家畜など、生活のすべてを捨てて、この地域の外での生活を余儀なくされました。事故から7年4カ月を経た今日も、この地域に指定された区域に通じる道路には、「立入禁止」の札が掲げられ、人々の侵入を阻んでいます。
 今月の日本の教会は、「難民・移住・移動者と共に」と題して「祖国を追われた難民やさまざまな事情で国を離れて生活する人々の困難を共に分かち合い、彼らの置かれている状況、特に技能実習生の置かれた状況を理解し、実習環境をより良いものとしていくことができますように」祈ることを勧めています。もちろん、生まれ育った国を離れて日本で生活する外国籍の人々を思い描きながら祈ることも大切でしょう。しかし、私たちのすぐ近くにも、原発事故によって住み慣れた地を離れざるをえなかった人々、ましてや、いつ帰ることができるかの目処すら立っていない人たちがいることにも、思いをいたさなくてはなりません。原発事故による放射能汚染からの避難は、帰還困難区域で暮らしていた人たちだけに留まっていません。放射能による人体への影響について不安を覚える親たちは、子どもたちの健康を考えて、自主的に居住地を変えて生活しています。
 移住・移動者にとって一番大きな変化は、物理的な環境ではなく、社会的な環境だと言われています。まず、それまでの近所付き合い、交友関係が崩れ、出会う人との関係を一人ひとりと新たに築いていかなければならなくなります。さらに文化の違いもストレスになります。同じ表現を使っても、地方や地域によってニュアンスが異なります。移住・移動者の抱えるこのような問題に理解を示しながら、あたたかな人間関係を造りあげる手助けが、とても重要となります。
 日本の教会が掲げた意向に思いをいたしながら、今週は特に、原発事故によって住み慣れた地を離れて生活する人々に、あたたかで安心できる共同体を提供することができるようにと、祈りをささげてまいりましょう。