2019年8月  2.無償の家族愛
 私たちは誰も一人では生きていけません。互いに助け合いながら、支え合いながら、それぞれが必要なものを分かち合って自らのいのちを長らえ、そしてそのいのちを次世代へと継承しています。
 私たちが生きている社会での分かち合いの仕組みはあまりにも複雑で、それぞれのモノやサービスがどの程度の価値を持っているかがわかりにくくなっています。そこで私たちは、価値の目安となる共通の基準を設けて、それを介して分かち合いが不公平にならないような仕組みを作り上げてきました。つまり貨幣を介したモノやサービスの交換という「経済」の仕組みでした。このように、不公平な交換がおきないように作った仕組みは、決して完璧とは言えません。そこで、その仕組みのゆがみを修整する制度も整備されました。税の仕組みや社会保障制度がこれにあたります。
 一方で、交換を前提としていないモノやサービスの提供も、なされています。つまり、何も対価を求めないモノやサービスの提供です。それは、人と人とが直接ふれ合う、小さな人の輪の中で行われていましたが、社会の中での仕組みが整うと、その輪は全世界にまで広げることができるようになりました。ボランティア活動や、寄付や献金です。このような活動は、提供したモノやサービスにふさわしい報酬を放棄した、無償の行いです。
 さて、教皇は今月の意向に「家庭、人間的成長の学び舎」を掲げ、「家庭が、祈りと愛に満ちた生活を通して、いっそう『真の人間的成長の学び舎』となっていきますように」祈ることを勧めています。家庭こそが、無償の行いがあふれている人の輪なのです。そして、無償の愛こそが人間的成長をもたらすために最も重要な要素なのでしょう。
 神の愛は無償です。私たちがよい行いをしたから神はわたしに報いてくださるのではありません。私たちがどうであろうと、神は常に私たち一人ひとりを愛してくださっています。この無償の愛は、きわめて自然なかたちで、家族の中に芽を息吹かせます。
 今週は、教皇の意向に心を重ねて、家族の間で交わされる無償の愛を、地球の人類家族に広げることができるように、私たちに知恵と勇気が与えられるように祈ってまいりましょう。