2019年9月  2.ESDとは
 今月は、教皇の意向も、日本の教会の意向も、地球環境の保全への取り組みについて関心を寄せて、ともに祈りをささげるように勧めています。そして、教皇の回勅「ラウダート・シ」に示された私たち人間の責任を全うできるようにと、カトリック教会は9月に「被造物を大切にする世界祈願日」を設けて心を合わせて祈りました。
 環境への配慮は、消費社会に暮らす私たち一人ひとりの課題です。私たち人間が、快適さと便利さを限りなく追い求めていくと、やがて地球は破綻してしまうからです。そしてこの気づきは、私たち大人が次世代の子どもたちに伝えていかなければならない大切なことの一つです。
 表題に掲げたESDとは、Education for Sustainable Developmentの略で「持続可能な開発のための教育」と訳されています。まさに、子どもたちに地球環境の保全を呼びかける、世界レベルでの取り組みで、国際連合科学教育文化機関(ユネスコ)の傘下の下で日本ユネスコ委員会が推進母体となっています。
 ESDでは、すべての人が質の高い教育の恩恵を享受すること、そして、持続可能な開発のために求められる原則、価値観及び行動が、あらゆる教育や学びの場に取り込まれること、環境、経済、社会の面において持続可能な将来が実現できるような価値観と行動の変革をもたらすことを目標として掲げています。そして具体的に教育の場面で、子どもたちに持続可能な開発に関する価値観として、人間の尊重、多様性の尊重、非排他性、機会均等、環境の尊重等を伝え、問題や現象の背景の理解、多面的かつ総合的なものの見方をもった体系的な思考力、代替案の思考力、データや情報の分析能力、コミュニケーション能力、リーダーシップの向上を身につけるように促しています。
 今、学校教育の領域では、21世紀型の教育と銘打って、教わること、学ぶことから、感じること考えることへの転換が進められています。環境に対する配慮も、このような新しい教育の潮流の中で、関心の喚起 → 理解の深化 → 参加する態度や問題解決能力の育成を通じて、具体的な行動を促すという一連の流れの中に位置付けるものとして、子どもたちの心を育てていくことができるように、願いたいものです。
 地球環境に対する配慮が、単に知識の伝達にとどまらず、体験、体感を重視して、探求や実践を行う参加型アプローチをとることによって、具体的な成果に結びつくようにと、子どもたちの将来を思い描きながら祈ってまいりましょう。
 子どもたちが、先進国が取り組むべき環境保全を中心とした課題を入り口として、環境、経済、社会の統合的な発展について取り組みつつ、開発途上国を含む世界規模の持続可能な開発につながる諸課題を視野に入れた取組みを進めていくことができるように、祈り支えてまいりましょう。