2019年10月  2.癌の標準治療
 日本の教会は10月の意向として「科学・技術に携わる人々のために」を掲げ、「科学と技術によって神の創造のわざにあずかる人々の働きを祝福し、その実りが神の国の完成に役立つものとなりますように」と祈ることを薦めています。科学は、因果関係を説明し、その関係の妥当性と信頼性を検証することで真実を明らかにしようと努めてきました。その結果、医療の現場でも病気の原因の解明とその治療法、薬の効用や副作用について、たくさんの研究成果が積み重ねられて、これまで命を奪う不治の病といわれていた病にかかった方にも、命を長らえる可能性がますます高まってきています。
 癌の治療もその一つです。患者の情報が蓄積され、また治療法による治癒率もデータ化されて、どのような種類の癌にはどのような治療が有効かが一つの基準として示されるようになってきたのです。このような科学の蓄積によってもたらされた治療法は、標準治療と呼ばれています。国立がんセンターによれば、標準治療とは、科学的根拠に基づいた観点で、現在利用できる最良の治療であることが示され、ある状態の一般的な患者さんに行われることが推奨される治療を指しています。二人に一人が癌になる時代です。ですから、誰でもが一定の水準の治療を保険診療の枠の中で受けることができるように、制度も治療法も整えられることが求められますが、科学・技術に携わる方々のはたらきによって、癌の治療の領域でそれが整えられていることは、実に喜ばしいことです。
 医療において、「最先端の治療」が最も優れているとは限りません。最先端の治療は、開発中の試験的な治療として、その効果や副作用などを調べる臨床試験で評価され、それまでの標準治療より優れていることが証明され推奨されれば、その治療が新たな「標準治療」となります。
 科学の最先端で研究に携わる人々に、神の恵みといつくしみが豊かに注がれるように、祈りをささげる一週間といたしましょう。