2019年10月  4.リチウムイオン電池
 今月の日本の教会の意向は、「科学・技術に携わる人々のために」です。そして、来日する教皇は「すべてのいのちを守るため」をテーマとして掲げています。そしてまた、2019年のノーベル化学賞は、リチウムイオン電池を開発した吉野彰さんに贈られることが決まりました。
 電気は蓄えることができないエネルギーとして捉えられていました。そこに、二次電池、すなわち、充電をして電気エネルギーを蓄積する技術が生まれましたが、蓄積できる電気の容量はきわめて小さなものでした。1985年、吉野彰さんたちは炭素材料を負極とし、リチウムを含有するコバルト酸リチウムを正極とする新しい二次電池であるリチウムイオン二次電池 (LIB)の基本概念を確立し、ノートパソコンや携帯電話などの電源に応用されるようになりました。
 今日、リチウムイオン電池は、石油や石炭などの化石燃料を使わない社会を実現する可能性を切り開く技術として、環境問題の解決につながると期待されています。太陽光発電は夜間はもちろんのこと、雨の日や曇りの日には発電量が小さく、電力の供給が不安定なことが課題となっていました。リチウムイオン電池を事業所や家庭に設置すれば、安定して電気を使うことができるため、この課題を解決することができます。
 今や、リチウムイオン電池は、温室効果ガスを出さない再生可能エネルギーを活用するために欠かせない存在となっています。住宅用の電力システムは、日中に太陽光パネルで発電した電力をリチウムイオン電池に蓄え、夜間や停電時に電気機器用の電力として活用する方向に移行しています。大容量の電気を蓄えることができ、しかも高いエネルギーを出力でき、さらに大型化しても安全性の高いリチウムイオン電池の開発で、気象条件に左右されても太陽光発電の電気を安定的に使えるようになったのです。このシステムのもとでは、最大で、家庭で使う電力のうちの70%を太陽光発電でまかなえます。今後、性能をさらに高め、電気の100%自給自足が実現する日が来るでしょう。
 このようなリチウムイオン電池の開発も、志をもって人類の未来のために研究開発を重ねる人々の、日々の努力のたまものであることに思いをいたし、「その実りが神の国の完成に役立つものとなりますように」祈ってまいりましょう。