2020年2月  2.人身売買
 教皇フランシスコは世界共通の意向として「犯罪取引の犠牲となっている、同じ人間である移住者の叫びに耳を傾け、対応することができますように」を掲げています。日本語に翻訳する際には「犯罪取引」としましたが、これは世に言う「人身売買」を指しています。移住移動を余儀なくされている理由には、内戦や迫害などもありますが、今日の21世紀に至っても未だに、人が金品と交換されて売買されている事実があって、その犠牲となった人たちは、まるで奴隷のように生活の拠点を離れて暮らさざるを得ない状況にあるのです。
 このような犯罪取引は、危険な児童労働を含む強制労働、強制結婚、性的搾取、臓器摘出など様々な方法の搾取による非人道的行為で、被害者の権利と尊厳を奪い、肉体的・精神的に深刻なダメージを与えます。国際人権諸規約に反する人権侵害であり、国際社会から重要課題として認識されています。
 人身売買の犠牲者の数は、2016年の統計によると、世界でおよそ4030万人と推定されており、その約半数がアジア地域に集中していると言われます。しかし、取引は水面下で行われることが多く、この数は氷山の一角と考えられています。そして、犠牲者の約25%は、子どもと言われています。
 このような犯罪取引を防止するために、国際的な法的枠組みとして2003年には国際組織犯罪防止条約人身取引議定書(国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人(特に女性及び児童)の取引を防止し、抑止し及び処罰するための議定書)が発効され、子どもについて特別に保護する立場から、18歳未満の人物を搾取の目的で勧誘し移動させることは、何らかの強制的な手段を伴わない場合でも禁止しています。しかし、この犯罪の犠牲となる人を無くすまでには至っていません。
 今日も世界のどこかで、この犯罪に巻き込まれている人々の叫びに思いをいたし、祈りをささげてまいりましょう。