2020年3月  1.悪は秘密主義
 教皇は中国の教会のために祈ることを奨めています。中国では、新型コロナウイルスによる感染症が流行して、人々は今まさに非常に困難な生活を強いられています。イエスを信じる者にとって、祈り(霊性)と分かち合い(共同体)と奉仕(使命)の3つの柱のうち、人々の交わりを深める共同体が、感染の危険を回避するために、集うことができなくなっていることが想像されます。神が、聖霊を豊かに送り、直接に出会うことができないキリストにおける兄弟姉妹の絆を、強めてくださるように、祈りたいと思います。
 ところで、中国から発表される様々な情報の信頼性が、常に話題となります。国家が情報をコントロールしているからです。一党独裁の政治体制では、民主主義が浸透したとしても、この壁を乗り越えることができません。かつてのソヴィエト連邦でも、共産党の支配のもとでは、常に真実を示す情報は、隠蔽されていました。インターネットの普及が、ソ連を崩壊に至らしめたとも言われていますので、真実を伝えることの大切さを、しっかりと認識することが求められます。
 イエスは、裁判の時に大祭司の前で、「自分には隠し事は何一つないし、隠れたところで話したこともない。わたしについての情報は、人々に聞いてほしい。皆、わたしが何を話したか知っている」(ヨハネ18・20-21参照)というように語られました。「秘密は何もありません」と表明したのです。一方、弟子のユダは、「秘密にしておけ」と悪の誘いを受けました。悪は「真実を隠して、秘密にしておくと、すべてがうまくいく」と誘っているのです。
 新型コロナウイルスの感染の拡大について、たくさんの秘密があるならば、私たちの社会が悪に打ち勝って、真実を明るみに出す方向に、歩みを変えていきたいと思います。感染症にかかわる発表や報道だけではなく、私たちの日々の小さな出来事についても、秘密をそそのかす悪に打ち勝って、事実を明るみに出して歩めるように、祈り願ってまいりましょう。