2020年3月  2.虐待被害者のため
 教皇フランシスコは、2016年に、子どもに対する教会のメンバーの責任について明確に意識できるように、神により頼む日として「性虐待被害者のための祈りと償いの日」を設け、全教会で祈りをささげるように定められました。これを受けて日本の教会は、2017年より四旬節第2金曜日をその日と定め、ともに祈りをささげ、さまざまな催しを行なってきました(今年は3月13日に当たりますが新型コロナウイルス感染症の拡大防止のために中止となったものもあります)。
 過去の出来事を隠蔽して葬り去り、時の流れにまかせて風化させてしまうのではなく、その事実を真摯に受けとめて、私たちの弱さを受け入れ、また、その弱さゆえの罪を認めて、人々、特に被害者と、神とにゆるしを願う姿勢は、現教皇フランシスコの基本的な姿勢です。
 人々を神の道へと導き、正義と平和を実現する責任に一端を担っている教会の中で、社会から逸脱した行為、例えば性虐待や汚職などが起きてしまった時、その事実を認めることはとても勇気のいることです。残念なことに、過去に起きてしまったその事実を、私たちは同じ志でイエスに従っていこうとする者として、自分のこととして受けとめることも必要でしょう。
 日本の教会は、3月にめぐってくるこの祈りと償いの日に合わせて、「きょうをささげる」の意向として「虐待被害者とその家族」のために祈るように奨めています。被害者の痛みに寄り添うことが求められていますが、同時に、加害者が犯してしまった罪についても、その背景にある社会情勢や人間関係などを鑑みて、人間の弱さと罪について黙想し、悪に打ち勝つことができなかった状況もしっかりと心に刻み、ともにゆるしを願いましょう。教会のために、また、弱い立場にある人のために、生涯をささげたと称賛されている人でも、時として悪に打ち勝つことができない状況に追いやられてしまう人間の弱さをもっていることを受け入れ認めることも、とても大切なことでしょう。
 虐待被害者とその家族一人ひとりの心に、神が寄り添い、いやしの恵みを与えてくださるように祈り願いましょう。