2020年3月  3.中国とバチカン
 2月中旬にドイツで行われていた「ミュンヘン安全保障会議」の際に、中国の王毅外相と教皇庁国務省外務局長のポール・ギャラガー大司教が会談したことが、CNS(カトリック・ニュース・サービス)の配信によって報じられました。外相レベルで中国とバチカンが会談を行うのは、1950年代の国交断絶以来、初めてのことでした。
 1900年代当初から、中国の共産主義は反資本主義とともに、反キリスト教を掲げてきました。それは、マルクスが「ヘーゲル法哲学批判・序説」のなかで、「宗教上の不幸は、一つには現実の不幸の表現であり、一つには現実の不幸にたいする抗議である。宗教は、なやめるもののため息であり、心なき世界の心情であるとともに精神なき状態の精神である。それは民衆のアヘンである」と書いたことに由来しています。宗教は民衆にあきらめとなぐさめを説き、現実の不幸を改革するために立ち上がるのを妨げているという意味です。その頃のキリスト教は、国王権力と支え合う関係になって、専制支配のもとで苦悩する民衆に忍従を説いていました。マルクスはそうした宗教の役割を批判したのです。
 その影響もあって、共産主義政権に移行して以来、中国でキリスト教は迫害を受けてきました。純粋な信仰生活をおくり、正義と平和のために自らをささげようとする人々は、迫害から逃れて、地下教会を作って活動をしました。人々の信心を抑え込むことができないと判断した中国共産党は、政治的なコントロールが可能な政府公認の「中国天主教愛国会」を地下教会とは別に創設して、管理、監視のもとで教会の組織を運営し、その組織の中に司教や司祭の聖職者も置いたのでした。そこで選出された司教たちのほとんどは、叙階前に秘密裏にバチカンに認知を求め、実際にそれを受けてきました。
 そのような状況の中で、1980年代から中国政府とバチカンは少しずつ歩み寄り、2018年には「司教任命に関する暫定合意」にこぎつけ、今回の外相会談でもその合意の重要性が強調され、時間をかけて確実に進展してきた関係を双方が評価した結果がもたらされています。
 教皇の3月の意向は、このような国家間の交渉の進展の下で、実際の中国のキリスト教信者が「福音にたゆまなく忠実であり、一致を育んでいくことができますように」と祈るように薦めています。
 中国から端を発し、世界中に恐怖をもたらしている新型コロナウイルス感染症のパンデミックが、一日も早く収束するように祈るとともに、中国の教会のためにも祈りをささげてまいりましょう。