2020年4月  3.トリチウム水の海洋放出
 人類はいまだかつてない脅威にさらされています。新型コロナウイルスの感染症は、世界中に拡散し、アマゾンで暮らす免疫力の弱い人にも感染者が出てしまいました。世界の教会は心を合わせて、一日も早い終息を祈っています。
 日々の感染症拡散の報道の中に埋もれてしまっていますが、看過できないニュースがありました。福島第一原子力発電所に林立する汚染水タンクの貯蔵水を処理して海に流すという案が、経済産業省資源エネルギー庁の「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会」でとりまとめられ、この2月10日に最終の報告書として公表されました。このままだと、敷地内に置かれている保管タンクは2022年には限界に達してしまいますので、比較的放射線量の低いトリチウム水を海洋に放出するのがもっとも現実的な解決策だと結論づけたのでした。
 その後のシミュレーションで、福島原発の沖に投棄した場合には、風や潮流の影響によって海岸沿いに滞留することも分かりました。地元福島、そして漁業に従事する人々からは唐突な海洋投棄案に対して、強い反対意見が述べられています。
 日本の教会は、4月の意向として、「自然災害や原発事故の被災者」を取りあげ、「いまなお困難の中で日々を過ごしている人々を忘れることなく、彼らの置かれた状況を正しく理解し、傷みと労苦をともに担っていくことができますように」祈ることを奨めています。自然界に存在しない放射性物質が生成されて、その処理が大きな課題であることが分かっていながら、私たちは電力に依存した便利な生活を求めて原子力発電所を建設し続けてきました。その結果、大量の放射性物質が行き場を失って仮貯蔵され続けています。
 原子力発電に依存しない社会をめざして歩みを進めるために、日々簡素な生活を心がけていくことが、私たち一人ひとりに求められています。トリチウム水の海洋放出の案がとりまとめられたことをひとつの契機として、地球にやさしい生活を心がけ、日本の教会の意向に心を重ねて祈りをささげてまいりましょう。