2020年4月  4.ピア・カウンセリング
 ピア・カウンセリングは、障害をもつ当事者自身が自己決定権や自己選択権を育て合い、支え合って、隔離されることなく、平等に社会参加していくことを目指した活動の手法です。ピア(peer)とは年齢・地位・能力などが同等の「同僚、同輩、仲間」を指す言葉で、障害の当事者だからこそ共感し合え、経験を分かち合えることから、障害者の自立生活運動における基本姿勢として捉えられています。アメリカで1970年代初めに始まったこの考え方は、すぐに世界へ広がり、また、身体障害者ばかりではなく精神障害者、そして依存症で苦しむ人々の間にも広がりを見せました。
 教会を会場として例会を開催しているAAは、アルコール依存症当事者のピア・カウンセリングの場です。原則として当事者だけがその会合に参加します。指導者がいてその人の指示や助言に従うのではなく、当事者同士が対等の立場で支え合って、平等に回復の道を歩めることが大切な点です。
 依存症の当事者のピア・カウンセリングの場としては、ダルク(DURK)があります。
 ダルクとは、Drug Addiction Rehabilitation Centerの略で、薬物依存者の依存症からの回復と社会復帰支援を目的とした施設として始まりましたが、今では日本全国に広がり、また薬物依存症者ばかりではなく、アルコール依存症やギャンブル依存症など依存症全般に問題のある人のための施設として活動しています。
 教皇の意向は「依存症からの解放」で、私たち一人ひとりに「依存症に苦しむ人々が支援と寄り添いを受けることができますように」と祈ることを進めていますが、ピア・カウンセリングの発想からすると、同じ苦しみを抱えながらともに回復への道を歩もうと志している人々との出会いを手助けすることが、最も必要なことのようです。
 AAやダルクの活動に関心を抱いてその活動を理解し、もし身近に依存症で苦しむ人がいたならば、すぐにでも紹介できるように、日頃からの準備をしておきたいと思います。
 新型コロナウイルス感染症の終息が見通せない中にあって、罹患した人、家族をこの感染症で失った人の体験談からは、たくさんの気づきをいただくことができます。苦しみや痛みを分かち合って歩む、ピア・カウンセリングの手法は、人類の新たな脅威である感染症に対しても、応用できるでしょう。
 苦しみや痛みを分かち合って歩むことを心がけて、日々を過ごしてまいりましょう。