2020年5月  4.日本の終身助祭制度
 教皇の福音宣教の意向は、助祭が全教会を活き活きとさせるシンボルとなることに、大きな期待を寄せています。ここで述べられている助祭は、司祭への養成の過程での助祭ではなく、教会への奉仕のために生涯を司教に仕える終身助祭を指しています。この制度がカトリック教会に再導入されたのは、第二バチカン公会議以降のことで、半世紀ほどしか経過していません。ここでは、日本の終身助祭制度を概観しておきましょう。
 公会議後すぐにこの制度を導入した教会もありますが、日本では1972年の定例司教総会においてはじめて「日本における助祭養成」の必要性や課題について検討されました。その後、慎重に準備が進められて、1994年の定例司教総会において日本のカトリック教会としての終身助祭制度の導入およびその実施が満場一致をもって決議されました。そして、教会行政法制委員会によって『日本のカトリック教会における終身助祭制度および養成要綱』の作成が行われ、1995年度定例司教総会において承認を受けました。そして、終身助祭制度検討特別委員会が設置され、1995年7月に教皇庁福音宣教省へ認可の申請をし、1995年10月に正式に認可されました。
 制度として日本に終身助祭を導入するための教会法上の手続きは整いましたが、いずれの教区でも終身助祭制度を導入しなければならないことはなく、各教区の自主的な判断に任せられています。司教は、教区固有の事情を考慮しながら、必要性の有無を確認したうえで、司祭評議会ならびに宣教司牧評議会の意見を聴取し、慎重に導入を決定します。
 東京大司教区では1999年3月7日付の司教教書をもって終身助祭制度が公に導入され、はじめての終身助祭が誕生しました。その後、さいたま、名古屋、鹿児島などの教区でも導入が発表され、養成が行われて助祭叙階がされましたが、日本の16の教区にすべてこの制度が導入されているわけではありません。前述のように、教区それぞれが、時のしるしを識別しながら導入します。
 10世紀ころに司祭養成の過程の助祭だけとなって、終身助祭がカトリック教会からいなくなって約千年が経過して再興された制度ですので、まだとまどいもあるでしょう。しかし、教皇フランシスコはこれからの教会のために終身助祭のはたらきに期待を寄せ、世界の教会が助祭のために祈ることを望んでいます。この一週間の祈りをカトリック教会の新しい動きである終身助祭のためにささげることと致しましょう。