2020年6月  4.祈り合うこと
 聖アウグスチヌスは「祈りは魂の呼吸である」という言葉を残しています。起きているときも寝ているときも、歩いているときも仕事をしているときも、私たちが絶えず呼吸を続けていることと同じで、祈りは、すべての人が、いつでもどこでも、きわめて自然に行っている心の営みです。
 その営みは、自分の心を相手の心に重ね合わせて、自分の思いを相手に伝え、相手の思いを心で受けとめる営みということができるでしょう。それを無意識のうちにではなく、意識して、しかも心を重ね合わせる相手を特定して行うことが、狭い意味での「祈り」です。自分で呼吸をコントロールして、深呼吸をしたり、吸う息吐く息を整えて瞑想をしたりするときの営みに似ています。手紙の結びに「ご自愛のほどお祈り申しあげます」と添えるのは、受け取る方の心に、「どうぞご健康にお気をつけください」と伝える思いの表れです。
 日本の教会の意向で示されている「人格的交わり」は、心と心を重ね合ってその思いを互いに通じ合わせることにほかなりません。つまり、孤立している人の心に私たちの心を重ねて祈ることで思いを伝え、そしてまた、痛みや苦しみ、辛さを抱えている心の思いを汲み取ることです。
 もちろん、私たちの心をいつくしみ深い神の心に重ね合わせて思いを伝え、また神が私に何を求めておられるかを汲み取ることが、祈りの本質でしょう。しかし、人間どうしが互いに祈り合うことによって、人格的な交わりに大いなる深まりが生まれることも確かです。神に祈ること、そして、互いに祈り合うことを心におきながら、この一週間を過ごしてまいりましょう。