2020年7月  2.ラブファミリー
 新型コロナウイルス感染症は、依然として猛威を振るっています。日本では感染を押さえ込むことができているとの判断で、緊急事態による様々な制限や自粛要請が段階的に解除されてきていますが、経済活動はリーマンショック以降の落ち込みに匹敵するほどに至っています。そして、医療現場で働くスタッフの負担も軽減されず、疲労が蓄積されていくことが懸念されます。感染症のパンデミックの終息は、日本の教会が急遽「きょうをささげる」の意向に取り上げ、また教皇のビデオでも全世界に訴えています。ワクチンや治療薬が開発され、一日も早く医療現場で用いることができるようにと、心を一つにして、祈りを続けて参りましょう。
 さて、教皇は今月の意向として「家族」を取り上げています。家族とは、親子兄弟姉妹が中心となって織りなす有機的な人間関係ですが、そこには愛と尊敬が伴われていることは至極当然のことでしょう。愛することを、キリシタン時代の言い回しからヒントを得て「相手を人間として尊敬し、大切にすること」と解するならば、愛の基本は、親子や兄弟姉妹との関係に神によって本来的に備えられているものとして理解することができます。
 ところが、教皇はあえて家族を取り上げ、「愛と尊敬がともない、ふさわしい助言が与えられますように」と祈ることを、世界の共通の意向として掲げています。ということは、今日では自然に育まれていくはずの愛と尊敬の関係が、家族の中で失われてしまっていることを憂慮していることが分かります。
 今回の感染症の流行を防ぐためにとられた対策の第一は、不要不急の外出を控えることでした。そのために世界的に「ステイホーム」がスローガンとして掲げられました。家庭は家族がともに暮らして社会関係を育む空間です。ですから、失われつつある愛と尊敬を確認して取り戻す、絶好のチャンスになったはずなのですが、外出を控えることや感染への恐怖のためのストレスから、DV(ドメスティック・バイオレンス:家庭内暴力)が増加しているとの報道がなされています。
 ステイホームを、家族を愛する絶好の機会――ラブファミリーのチャンスにすることができますように、まわりで暮らす人たちへの配慮の中にその願いを込めて、この一週間を過ごしてまいりましょう。