2020年9月  2.「すべてを支配させよう」
 「神は言われた。『我々にかたどり、我々に似せて、人を造ろう。そして海の魚、空の鳥、家畜、地の獣、地を這うものすべてを支配させよう。』」(創世記1・26) 聖書の始めに書かれている食物連鎖の頂点に立つ人の創造と、その責任についての場面です。今週はこの中で用いられている「支配」という語の意味を深め、9月の第1日曜日の「被造物を大切にする世界祈願日」に因んで掲げられた日本の教会の意向「すべての被造物の尊重」を願い求めて祈りを進めてまいりましょう。
 「支配」という日本語の語感からは、権力を行使して思いのままに、言わば人間の側の都合で勝手に被造物を取り扱ってもかまわないような印象を受けますが、本来の意味は「秩序立てて管理する」ことです。意向の説明にあるように「神の創造された世界の秩序と調和」を人間は神から託されているのでしょう。
 いのちをいただいて生きているものに限らず、この地球上のすべての被造物を秩序立てて管理する責任を、私たち全人類が負っているのですが、国家や政治体制の違いから、共通の目標や方法を見いだすことに成功していません。国際連合を舞台として、持続可能な(サステイナブル)発展のために議論を重ねてきましたが、地球の温暖化は進行し、異常気象が頻発するようになりました。さらには、国際紛争や内戦で多くの火器が使用され、工業製品の製造過程で発生する二酸化炭素も一向に減る傾向にありません。つまり、総論としては被造物を大切にすることは了解しているものの、それぞれの国家、ひいては一人ひとりの個人のレベルで、思いのままに勝手に被造物を支配することになってしまっているのでしょう。
 皮肉なことに、この度のコロナ禍の中で、経済活動が停滞し、工場の稼働も制限され、航空機の飛行回数も減少した結果、大気がきれいになったことが報道されています。もちろん、多くの人が職を失い、日々の生活が困窮していることも大きな問題ですが、持続可能な成長を秩序立てて管理する知恵を見つけることができるようにと願ってまいりましょう。