2020年9月  4.今できること
 日本の教会は、昨年の教皇フランシスコの来日を受けて、9月1日から10月4日までを「すべてのいのちを守るための月間」と定めています。教皇来日の折りには、誰が今日の新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を予想していたでしょうか。このコロナ禍で、「いのち」に対する考えを大きく変えられた半年余りでした。
 宇宙の誕生から183億年、銀河系宇宙の太陽系に地球という惑星が誕生して45.5億年の時が経過しています。そしてこの地球に、偶然とも必然ともどちらとも捉えることができる出来事として生命が誕生しました。38億年前の海の地層から生命の痕跡が発見されていますので、生命が誕生したのは40億年くらい前のことだろうと推測されています。その生命は、細菌でした。そして、地球がさまざまな様相を呈しながら時を刻んでいく中で、生命は世代間の伝承の過程で進化し、やがて今から350万年ほど前に、ヒトが種として誕生しました(更科功著『宇宙からいかにヒトは生まれたか――偶然と必然の138億年史』新潮選書 参照)。
 いま私たちは、知性と感性とを働かせて理性を育み、この生命の惑星を守っていくことの責任を痛感しています。悠久の時の流れの中で、やがて人類の滅亡の時がくるやもしれません。地球にエネルギーを注いで、すべての生命を養う源となっている太陽は、永久不滅のものではありません。しかし、その時を、人の手で縮めてしまうことがあってはならないのでしょう。限られた資源を有効に計画的に消費し、化学物質や放射性物質で環境を破壊しないように努めることは、まさに「待った無し」の事態なのでしょう。
 今月の意向で「今、わたしたちにできることを見極め」という表現があります。今という瞬間瞬間に、知性と感性を働かせて理性を持って、できることを一つずつ実践していくことが切に求められています。そして、天地万物を創造された神が、その実践について「よし」とされているか否かを、神との対話のうちに確認していくことも、信仰に生きる私たちには求められています。知性、感性、理性の上に、霊性を深めて生きることができるように願いながら、小さなことでも、今できることを重ねて、すべてのいのちを守る生き方を歩んでまいりましょう。