2020年10月  4.ノーベル生理学・医学賞
 2020年のノーベル生理学・医学賞にC型肝炎ウイルスの研究者である、アメリカの国立衛生研究所のハーベイ・オルター氏、カナダのアルバータ大学のマイケル・ホートン氏、アメリカ、ロックフェラー大学のチャールズ・ライス氏の、合わせて3人の研究者が選ばれました。3人は、C型肝炎ウイルスの発見によって多くの慢性肝炎の原因を明らかにし、輸血などの際の検査ができるようにしたほか、多くの人のいのちを救う治療薬の開発に道をひらいたことが評価されました。
 今まさに、私たち人類は新しいウイルスと戦っています。昨年末から感染力の強いウイルスに罹患した人があらわれ、またたく間に世界中に広まって、半年あまりの間にその罹患者数は3880万人にも達しました。このパンデミックに立ち向かうためには、治療薬とワクチンの開発が鍵となることは、間違いありません。各国でワクチンの開発が進められて、一日も早い実用に向けて研究がなされています。
 日本の教会は「医療や科学に携わる人々」を今月の意向として掲げ、「医療や科学に携わる人々が、それぞれの専門分野を通していのちに仕え、神の創造の業に参与することができますように」と祈るように招いています。2018年にこの生理学・医学賞を受賞した本庶佑(ほんじょたすく)氏は、最近の著書『がん免疫療法とは何か』のなかで、第3章を「いのちとは何か」と題し、生命科学の立場から生きることの本質について論じています。
 日本の教会が掲げた「専門分野を通していのちに仕え」という表現は、科学の最先端で研究に従事したノーベル生理学・医学賞の受賞者が抱いている真理の探究に際しての大切な心の有り様だと理解することができます。人類社会に貢献した英知に与えられるノーベル賞は、地道な基礎研究の積み重ねの結実といわれています。いのちに仕える研究が積み重なり、その結実としてパンデミックが終息に至りますようにと、祈り願う日々と致しましょう。