2020年11月  3.人工知能の可能性
 教皇の意向では、今日目覚ましい進化を遂げている人工知能が人間のために役立つものとなるように祈ることを奨めています。私たちの日常の中にも、どんどんと人工知能が使われるようになりました。家庭電化製品にも組み込まれ、例えば洗濯機では、洗濯物の量を自動的に感知して水量や洗濯時間を設定することはもとより、洗剤が自動投入されるものまで登場していますし、炊飯器では、白米か胚芽米か玄米かなどの炊く米の種類だけでなく、米の銘柄の設定までも選択できて、最もおいしく希望の時間にご飯が炊けていることが当たり前になってきています。
 大規模な工場や集配施設でも、自動化、ロボット化が進み、その中心で人工知能が働いています。情報伝達に用いられる電子的な信号のため、そして、ロボットや運搬設備の動力のために電力を供給することができれば、人工知能を組み込んだ装置は24時間365日、不平不満を言うことなく働き続ける仕組みができあがっているのです。
 しかしながら私たちが気を配らなければならないのは、この人工知能を制御するのは高度な知識を持った技術者や、その人々を管理する政治家や資本家などの一部の支配層であることでしょう。情報学者の西垣通氏は「人工知能と宗教―『AI原論』から見えてくるもの」という「現代宗教2019」(国際宗教研究所)の論文で次のように結んでいます。「人工知能が社会的判断を下しつつ仕事をする社会とは、社会的制約がきわめて強化され、テクノクラートが自在に支配力をふるえる新たな情報社会になるでしょう。すると人間の自由な思考とその伝達の範囲はどんどん狭められてしまいます。(中略)そういう未来にならないためには、いったいどうすればよいのか?――これこそ、われわれが今、真剣に考えるべきテーマではないでしょうか。」と。
 人工知能という人間の知恵の結集を、すべての人が公平に享受することができるようにと、私たちの祈りをささげてまいりましょう。