2020年12月 2.食物連鎖 |
日本の教会は「いのちへのまなざし」を意向に掲げ、「すべてのいのちを見守る神のまなざし」を私たち一人ひとりが「自らのうちに育むことができますように」と祈るように奨めています。 「すべてのいのち」に心を向けると、私たち人間のいのちを支えている植物や動物のいのちに思いが至り、私たちが日々口にしている食べ物は、他のいのちの犠牲の上にあるという現実を、突きつけられます。自然界の食物連鎖のピラミッドでは、弱肉強食の論理の通り、上層にタカやライオンなどの肉食動物が位置づけられ、最下層には植物が置かれています。植物の上にはそれを食べる昆虫などがいて、その上にはその昆虫などを食べる鳥などがいて、その上に肉食動物がいるように描かれています。そして人間は、そのすべてを支配することができるので、食物連鎖のピラミッドの頂点の上にいるということができるでしょう。 キリスト教で食事の時にささげる祈りは、自由に自分のことばで祈ることができますが、皆で一緒に声を合わせて唱えるために「父よ、あなたのいつくしみに感謝してこの食事をいただきます。ここに用意されたものを祝福し、わたしたちの心と体を支える糧としてください。」といった例文があります。この祈りでは、私たちのいのちが他のいのちの犠牲の上に成り立っていることにまでは触れていませんが、食べ物のすべての素材の中に、いのちの連鎖が秘められているのです。 そもそも人類は、植物を主食としていますので、自然界の食物連鎖に中に位置づけることはふさわしくないかもしれません。また、食物連鎖のピラミッドの上に行けば行くほど、個体数が少なくなるという法則にも当てはまりません。頂点に位置するライオンの全世界での総個体数は、正確に把握することはできませんが、約2万頭といわれていて、近年減少傾向が続いています。その数に比べて、世界人口は2019年の推計で77億人となっています。そのすべてが、他の動植物のいのちのおかげで生きていることができるのです。 食物連鎖を思い、その時に食するものの中に秘められた数々のいのちに思いを馳せて、感謝のうちにいただくことを、日々の生活の中で実践してまいりましょう。 |