2021年1月  1.普遍的な兄弟愛
 1月1日は神の母聖マリアの祭日であるとともに、「世界平和の日」をともに祈る日です。2021年こそ、人類にとっての大きな脅威である感染症を、人種、国籍、宗教を超えて英知を結集し、協力し合って克服しなければなりません。年の初めに、コロナ禍の一日も早い終息を祈りましょう。
 教皇の意向も、そして日本の教会の意向も、今月はキリスト教以外の諸宗教を信じる人々と心を合わせ、親交に結ばれて、人類の課題にともに立ち向かっていくことを指し示しています。宗教がそれぞれの教義の違いや信仰実践の違いを超えて、普遍的な兄弟として互いに尊敬し合うことは、この世での正義の平和の実現に、欠くことができません。
 カトリック教会は、その教えが現代人の諸問題の解決に貢献するよう、すべての信者の力を結集することを目的として、アジョルナメント(現代化)をモットーにして約50年前に第2バチカン公会議を開催しました。そこで審議された事柄は16の公文書としてまとめられ、大切な4つの文書は「憲章」と名付けられ、今日の教会の指針となっています。
 公文書の一つに「キリスト教以外の諸宗教に対する教会の態度についての宣言」があります。「現代世界憲章」が93項、「教会憲章」が69項にわたる大きな文書にくらべると、この宣言はほんの5項の小さなものですが、発布の意味は極めて大きなもので、私たちはその内容をきちんと理解して祈りの生活を深めることが求められます。なぜなら、この公会議以前の教えでは、「教会の外に救いはない」という考えのもと、洗礼を受けないまま亡くなった人は天の国に入ることができないと、言われてきたからです。日本にキリスト教を伝えた聖フランシスコ・ザビエルは、インドで宣教している時、たくさんの善良な人々が地獄に落ちてしまうのは心苦しいと、一日に数千人もの人に洗礼を授けたという話しが残されています。第2バチカン公会議を経た時代に、同じインドで宣教した聖マザー・テレサは、臨終を看取る時にその人の宗教を尋ねて、その宗教の祈りをともにささげました。ここに、普遍的な兄弟愛を宣言した第2バチカン公会議の現代的意義を観ることができるでしょう。
 「カトリック教会は、これらの宗教の中にある真実にして神聖なものを何も拒絶することはない。その行動様式や生活様式も、その戒律や教理も、心からの敬意をもって考慮する。それらは、教会が保持し提示するものと多くの点で異なっているとしても、すべての人を照らすあの真理そのものの光を反映することも決してまれではないからである(第2項)」。このように記された「宣言」を心に留めて、年の初めの一週間を過ごしてまいりましょう。