2021年3月  2.自立と援助
 「東日本大震災10年目にあたって」で始まる日本の教会の意向にあるように、地球の地殻変動が引き起こした大地震と巨大津波がもたらした大災害、そして原子力発電所の事故から、長い年月が経過しました。この節目のとき、災害で生命を落とされた方々、家族を亡くされた方々、家や家財を失った方々など、被災されてすべての方々のために、祈りをおささげいたしましょう。
 意向に掲げられた文章に、「自立」と「援助」のことばがあります。「被災者の自立に向けてともに歩む決意を新たにし、復興に向けて尽力する人々を援助することができますように。」と綴られた文章の中で、この二つのバランスをしっかりと意識し、その時々に私たちに求められる一番大切ものを差し出すことの重要性を感じます。
 知的障害児の支援に尽力した一人の先達は、「愛することとは、その人の自立を助けることであって、何でもかんでもできないことを手伝うことだとはき違えないことが大切だ」と言い、また「だからこそ、愛するためには知恵も我慢も必要だ」と述べていました。援助が依存を生み、依存が自立を妨げるといった悪循環は、災害援助に限らずそこここで見受けられます。ですから、10年の時を経た今、自立と援助のバランスについて、見直すよい機会であると捉えることができるでしょう。
 復興とは、元の状態に戻すことではありません。人々の暮らし向きが以前の状態にまで回復し、他の人たちの助けなしに日々の営みがこなせるようになることです。ですから、復興援助はスタートの時点から、自立に向けての歩みであるべきなのでしょう。
 いまだに復興への道を歩んでいる方々には援助が必要であることを心に留めながら、いつも自立に向かってともに歩む姿勢を保ち、祈りをささげてまいりましょう。