2021年3月  3.修復的対話
 教皇の今月の意向の主題は「和解」です。対立関係が生じてしまったときに、それをどのように解決すればよいかという課題は、人類がこの地球上に誕生してからの歴史の中で、絶えず生じてきました。神は、公正と正義を願い、私たちを平和へ、和解へと招いてくださるのですが、人間的な弱さから、また悪の誘(いざな)いによって、自分側の利益を最大限とし相手側の利益を最小限にしたいとの望みがわき出してきます。
 人類の歴史の中では、人間の努力ではどうにも解決の糸口が見いだせなかった領域である、神との交わり、病気の治療、紛争の解決について、その共同体で人格的に優れていると認められ、神から特別な力を授かっていると共同体が承認する人物が、その役割を担ってきました。時が経つにつれて、この役割は分化され、宗教家、医師、裁判官のような立場に立つ人々が登場します。言わば命を救ってくださる仕事を担う人たちですから、その行いに対してどのくらいのお礼、報酬が支払われるべきかの判断がつかないため、共同体が生活の全般を世話したという、私たち人間の歴史がありました。ですから、今でも法律にしたがって紛争を解決すべく、弁護士、検事、裁判官が、司法の場で調整の役割を果たしています。
 その司法の領域で、「修復的(restorative)」という新しいアプローチが生まれました。対話によってトラブルを平和的に解決するという考えに基づいていて、ハワード・ゼアによって提唱されました。個人あるいは集団が受けた傷を癒し事態を望ましい状態に戻すために、問題に関係がある人たちが参加し、損害やニーズ、及び責任と義務を全員で明らかにすると同時に、今後の展望を模索する過程を通して行われます。その対話においては、お互いに尊重する、相手の話に耳を傾ける、相手を非難しない、話したくないときは話さなくてもいい、という基本的なルールを守ることが求められます。
 この、双方が相手の人間性を尊重して、何とか平和のうちに解決を図りたいという方法は、何も新しいものではありません。北米のネイティブアメリカンの間では「ピースメーキング」をはじめ、ハワイ、ニュージーランド、南アフリカなどでこのような対話によって問題解決を図る方法がとられてきたのです。
 対立関係を解決する手段として有効な「修復的対話」について理解を深め、和解への道を歩むことができるようにと、祈りをささげてまいりましょう。