2021年3月  4.備えあれば・・・
 東日本大震災から10年が経過して、日本は新しい次の一歩を踏み出そうとしています。10年間の歩みを特集したさまざまな報道がなされる中で、いまなお帰宅困難な状況を強いられている方々がたくさんおられることに、心を痛めます。地震や津波の自然災害の折の、防災、減災がどれほど大切なものか、改めて心に刻むことが求められているでしょう。
 日本の教会は、「被災者の自立に向けてともに歩む決意を新たにし、復興に向けて尽力する人々を援助すること」に心を向けて祈るように奨めていますが、被災者を出さないための努力も、怠ってはなりません。「備えあれば、憂(うれ)いなし」の言葉どおり、想定外の事態にも対応できる備えを心掛けるように致しましょう。
 この1月から各地で起きている地震が、南海トラフ地震の前兆ではないかといった議論もなされていますが、専門家の間では「今すぐ来てもおかしくない」とも言われています。ですから、東日本大震災の経験を生かして、いのちを守るための対策を講じておかなければなりません。この地震では、高知県土佐清水市には震度7の地震が襲った4分後に最大で34メートルの高さの津波が押し寄せることが予想されています。全体での死者数は最悪の事態となると32万3千人、負傷者は62万3千人にのぼると予想されているのです。東日本大震災の死者は3月1日の時点で関連死を含めて15,899人、行方不明者は2,526人です。この数の20倍を超える死者が予想される南海トラフ地震の災害から、一人でも多くのいのちを守るためには、備えしかありません。そして、その備えの一つひとつは決して難しいことではありません。避難場所、避難路を確認することから始まって、1週間分の飲み物と食べ物を備蓄しておくことなど、その気になれば簡単に準備することができるものばかりです。
 私たち一人ひとりは、いのちと生活を守る責任を担っていますが、同時に人の輪、つまり、家族であったり、職場の仲間であったり、近所付き合いであったりする、他の人との交わりの中で、その責任を担い合うことによって大きな成果を生むことを、阪神淡路大震災、東日本大震災の経験から学んできました。このような人の輪を心に留めながら、できる限りの備えを実行に移すように致しましょう。
 南海トラフ地震による死者は、万全な備えによって半数以下に押さえることができるといった研究報告もあります。「備えあれば憂いなし」を意識して過ごす一週間と致しましょう。