2021年4月  4.日本国憲法の三原則
 教皇の世界共通の意向、そして日本の教会の意向も、基本的人権について触れていて、それが侵害されている人々のため祈るようにと促しています。そもそも基本的人権は、450万年もの長い長い人類の歴史の中で、この数百年の間にとうとう手に入れることができた、極めて重要な事柄なのです。そして、イエスは2千年前に、一人ひとりが大切にされることが神の望みであり、命をいただいているすべての人は神が創造された傑作であることを宣言され、基本的人権について明確な教えを宣べ伝えました。
 そして、民主的な市民社会が成立し、第二次世界大戦後の1948年12月10日に、国連の第2回総会で世界人権宣言が決議されて、すべての人の人権が保障される世界となりました。世界人権宣言、正式には「人権に関する世界宣言」と言いますが、条約ではなく、したがって法的拘束力はありませんが、次第に人権に関する判断基準となり、慣習国際法としての地位を獲得してきました。ですから、ミャンマーの軍事政権による弾圧や、中国のウイグル地区での少数民族に対する差別など、人権が著しく侵害されている状況に対して、国際社会が非難の声明を出している現実があります。
 日本では、世界人権宣言の前年、1947年5月3日に施行された憲法で、はっきりと基本的人権が謳われています。日本国憲法の基本原理は、「基本的人権の尊重」「国民主権」「平和主義」の3つとされています。この根本には、憲法第13条の個人の尊厳の定めがあり、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」としています。
 第11条の「基本的人権の享有と性質」においては、「この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与えられる。」とし、すべての人が法的に擁護されている状況が保障されているのです。
 現実の社会においては、人間の弱さから、様々な場面で人権侵害が起きてしまいます。私たちは互いに愛し合う関係を築くばかりでなく、それぞれが人間として大切にされているかどうかについて気遣うことも大切です。
 5月には連休が控えています。3日は憲法が施行されたことを記念する国民の祝日であることに思いをいたし、日本国憲法の三原則を心におきながら、過ごしてまいりましょう。