2021年5月  1.金融は経済の動脈
 新型コロナウイルス感染症の拡大に歯止めがききません。ワクチンの投与によって感染拡大の防止に成功した国々と、ワクチンが手に入らずに未だに爆発的な感染拡大に苦しんでいる国々とが、世界で同時に存在している現実に、怒りを超えた悲しみさえ覚える昨今です。人類に共通の脅威に対して、手を取り合い、互いに支え合いながら立ち向かうことができるようにと、祈りをささげてまいりましょう。
 さて、教皇は今月の意向に「金融」を取り上げました。なぜ、今、知恵に満ちた金融が各国政府で真剣に議論されなければならないのかを、考えてみましょう。経済活動を行う際に、資金が不足する者と資金が余剰する者とが生じますが、その両者を結んで資金が必要なところに配分されること金融と言います。つまり、お金を融通する仕組みです。その活動は、資金の調達、資金の配分、投資あるいは融資の三つの区分として捉えられています。そして金融は、経済の安定・発展に欠くことができない重要なものと理解されています。「金融は経済の動脈」「金融は経済の血液」などと称されるほどです。
 ですから、各国とも金融に関する法律を整備して、それに基づいて管理や監督を行うとともに、公定の金利を引き下げて金融緩和を行ったり、その反対に金利を引き上げて引き締めを行ったりしながら、社会の中での資金の流れを調整する金融政策を行っています。それぞれの国が最善の方策を講じて、自国の経済のために努力しているわけですが、資金が国境を越えて流通する事態となった今日では、一国の政策だけでは世界共通の課題に立ち向かうことができません。このグローバリゼーションの進行、ましてや貧しい国と豊かな国の差が拡がっている中では、国々が世界の経済の安定と発展のために強調して金融に関する約束事や管理監督を行うことが欠かせないのです。
 ところが、豊かな国でさえ自国の発展を最優先にする傾向が、最近ますます高まってきています。アメリカ、ロシア、中国などの大国は、その最たるものです。そこで、国境を越えて兄弟姉妹として分かち合い支え合うことができる教会は、教皇の意向のように「金融界の責任者たちが、政府と協力して経済の安定を図り、人々を危機から守ることができますように。」と祈ることが求められているのでしょう。
 信仰生活にとって場違いなことと捉えてしまいがちな領域ですが、教皇の意向に心を合わせて経済の動脈である金融について関心を寄せ、人類全体の安定と発展のために祈りをささげる一週間といたしましょう。