2021年5月  3.世界銀行
 教皇は、金融界で働く人々が私たちを危機から守る力を持っていることに期待をよせて、今月の意向で「金融の世界」を取り上げています。現実にお金がやりとりされて、経済活動が行われているまっただ中で、全体の安定と繁栄のためにどのような策を講じればよいかを、世界レベルで取り組んでいる機関に、世界銀行(ワールドバンク)とIMF(国際通貨基金)がありますので、今週は世界銀行の役割について確認しておきましょう。
 世界銀行とIMFの2つの国際機関は、第二次世界大戦後の1977年7月にアメリカで開催されたブレトン・ウッズ会議で設立が決定されました。当初、IMFは国際収支の危機に際しての短期資金供給、世界銀行は大戦後の先進国の復興とかつての途上国の開発を目的として、おもに社会インフラ建設などに長期で資金供給を行う機関とされました。ただし、ソビエト社会主義共和国連邦が設定には賛成したものの、条約として批准せず、出資金も供出しなかったために、冷戦終結に至るまで加盟できず、社会主義国での活動は低調でした。
 世界銀行の加盟国は、現在189カ国で、毎年1回すべての加盟国から総務1人代理人1人が参加する総務会が意志決定機関となります。各国は出資比率に基づいて投票の票数が決められていて、最も多いのはアメリカ合衆国で総票数の15.85%を占めています。因みに日本は6.84%です。
 財源は1970年ころからそれまでの拠出金中心から、世界銀行債を発行して広く資金を集める方法に転換し、融資総額も大幅に増大させました。各国の政府から債務保証を受けた機関は融資を受けることができます。ところが、民間企業や貧しい発展途上国などへの融資も必要となり、世界銀行の機能を補完する他の組織、例えば国際開発協会や国際金融公庫などが設立されて、国際的な融資活動が行われています。
 今日世界銀行は、関連する以下の5つの機関がグループを形成してその役割を担っています。まずは、国際復興開発銀行で、主に中所得国に対して開発資金を融資する役割を持ちます。第2は国際開発協会で、国際復興開発銀行の融資基準に満たない貧しい国に開発資金を供給します。世界銀行という呼び名が使用される場合、国際復興開発銀行と国際開発協会の両機関を指して呼ぶことが一般的です。第3は国際金融公社で、国際復興開発銀行・国際開発協会の融資は政府向けのものに限られるため、そこからは融資できない途上国の民間企業向けの融資を行う機関です。第4は多国間投資保証機関で、途上国への融資に保証を与えることで、外国からの融資を促進するための機関です。第5は投資紛争解決国際センターで、発展途上国と外国投資家との投資紛争を仲裁するための機関です。
 私たちの日常の家計経済とは異なる国家レベルでの融資が行われて、貧困削減と持続的成長の実現に向け、途上国政府に対し融資、技術協力、政策助言を提供していることをしっかりと受けとめながら、そこでの政策が正義と平和の実現に結びつきますようにと、祈りをささげてまいりましょう。