2021年7月  2.平和の祭典
 7月23日にオリンピックの開会式が行われ、世界中からトップアスリートが集まります。また、8月24日には、パラリンピックの開会式が続きます。日本の教会は、7月の意向として「オリンピック・パラリンピック」を取り上げ、私たちも心を合わせて「文化や国籍などの違いを超え、友情、連帯、フェアプレーの精神をもって互いに理解し合う、平和の祭典となりますように」と祈るよう奨めています。
 4年に一度の平和の祭典と呼ばれるこの世界的な競技大会は、一人ひとりの人権が擁護され、また人間の尊厳が冒されることのないようにと、その理念が記載されている「オリンピック憲章」を年々更新し、それに従って競技会が開催されています。世界規模の一大イベントのため巨額の資金が投入され、また運営や報道をめぐってもさまざまな権利関係の調整が必要であるために、国際オリンピック委員会(IOC)と開催都市を中心に構成される組織委員会(今回の場合は東京2020組織委員会)が想像を超える大きな役割を担っていることはあまり知られていません。
 ところで、オリンピックの歴史の中で夏季と冬季と合わせて5回の中止がありました。クーベルタンが1894年にパリ国際アスレチックコングレスを開催してIOCを立ち上げ、1896年にアテネで近代最初のオリンピック競技大会が開催されて、5つの大陸を象徴する五輪のマークのもとに平和の祭典として続けられてきた大会でしたが、第一次世界大戦のために、1916年のベルリン大会が中止となりました。2度目に中止になったのは1940年に開催が予定されていた東京大会で、この中止にも戦争が絡んでいます。1937年に日中戦争が始まり、日本は1938年7月にIOCに開催を返上しました。ヘルシンキが代替地に選び直されましたが、世界中が第二次世界大戦に歩みを進めて中止となっています。1940年に開催が予定されていた冬季の札幌大会、1944年の夏季のロンドン大会と同年の冬季コルティナダンペッツオ大会も、戦争のために中止となりました。
 このように、国際紛争が原因で中止となった歴史はありますが、パンデミックという人類にとっての新たな脅威によって開催が危ぶまれるとはだれが想像したでしょうか。10年前の東日本大震災と原発事故から、各国の支援を受けて日本が立ち上がることができたことを世界に示す復興五輪との位置づけは、その意味合いを大きく変化させています。ワクチン接種は進んでいますが、感染の再拡大への懸念は払拭されていません。
 競技でベストを尽くすことに励んできた一人ひとりのアスリートの心に思いをいたして、真の平和の祭典が行われますようにと、心を合わせて祈りをささげてまいりましょう。