2021年7月  3.フランクリン効果
 教皇の意向は「社会における友情」です。友情を育むために役立つ、ちょっとした心理的な効果を使った方法があります。18世紀のアメリカ大統領のベンジャミン・フランクリンの逸話に由来があることから、「フランクリン効果」と呼ばれています。
 フランクリンはペンシルベニア州議会の場で、仲のよくない議員を味方につけたいと考え、親切にして好意を得るのではなく、その反対に本を貸してほしい、つまり、親切にしてほしいと頼み事をしたのです。その結果、その議員のフランクリンに対する態度が優しく親切になったのでした。なぜ、親切にしたからではなく、親切にしてもらったことで、関係が好転するのでしょうか。
 これは、社会心理学者フェスティンガーが唱えた「認知的不協和の理論」によって説明できます。人は、相手に対してプラスの感情とマイナスの感情を同時に抱いているときに、その矛盾を解消すべく、どちらかを修正しようとします。本を貸すというプラスの感情を伴う行動と、仲がよくないというマイナスの感情があるわけですが、本を貸してしまったのでそのプラスの感情を修正することはできません。ですから、仲がよくなるように、マイナスのの感情を修正する、という説明になります。このプロセスは、ほとんど無意識のうちに行われるといわれています。
 仲の悪い相手に頼み事をするのは、勇気がいります。でも、フランクリン効果を知っていると、その頼み事が関係改善のきっかけになるという見通しが立ちます。ヤコブの井戸でイエスがサマリアの女に「水を飲ませてください」と語りかけた場面でも、サマリアとユダヤの関係からマイナスの感情であった状況を、見事によい関係に導いた「フランクリン効果」であったのかもしれません。
 友情を育むために、苦手な相手にあえて頼み事をする勇気をいただくことができるようにと、祈り願う日々と致しましょう。