2021年7月  4.ゼノフォビア
 ゼノフォビア(xenophobia)とは、外国人嫌悪あるいは外国人恐怖症のことで、自分と国籍や民族が違う人や集団を排斥または嫌悪する気質を指すギリシャ語です。異人、よそ者を意味するゼノ(xenos)と恐怖を意味するポボス(phobos)に由来します。見知らぬ人を恐れるという、ある意味で人間の自然な感情であって、人種差別とは異なります。
 しかし、この恐怖感はコミュニケーションの断絶につながり、共通の感情を経験した人たちが特定の国籍や人種に対して偏見を抱き差別をすることにつながりかねません。友情を培うことの妨げとなるこの種の恐怖に、どのように対処することが求められるのでしょうか。
 まず、多様性について深く理解し、さまざまな違いの中に人間としての共通の豊かさを見いだしていくことが求められます。人間としてのあり方は、極論すれば一人ひとりがそれぞれ違っているのです。神はその一人ひとりをご自分の傑作としてお造りになっているのです。悲しいことですが、人間の歴史は異民族や他国との戦いで綴られてきました。遺伝子の中に組み込まれた子孫の繁栄をうながす本能は、異民族を征服し統治することに私たちを向かわせてきたのでした。今日、交通と通信が発達し、私たちにとって未知の世界はなくなり、ともに生きる人間として共通の課題に立ち向かおうとしています。多様性を受け入れることが、ゼノフォビアを克服するための第一歩です。
 他の国の人、特に私たちにあまりなじみのない大陸から来た人に接する機会が生じたときには、コミュニケーションに心掛けることも大切です。言葉が通じなくても、身振り手振りで、何をしてほしいのかはだいたい想像ができるものですし、スマートフォンで翻訳のアプリを使っての会話も、多いに役に立つものです。
 206の国・地域が参加を予定している東京オリンピック・パラリンピックが始まり、私たちは国籍や民族が違う人々に出会う機会や、映像を通して目にする機会が多くなることでしょう。ゼノフォビアを克服し、教皇の意向にあるように友情を育むことに思いをいたして過ごしてまいりましょう。