2021年8月  2.世界の軍事支出
 スウェーデンのストックホルム国際平和研究所が発表した2020年の世界の軍事支出の推計総額は、日本円に換算すると約213兆7499億円で、統計を始めた1988年以降過去最高でした。生命を脅かす戦争に備えるために使われているこの金額は、日本の国家予算106兆6097億円の約2倍にあたります。これがすべて社会保障や医療福祉に用いられれば、どれほどの生命が救われるのでしょうか。
 日本の教会は、8月6日から15日の日本カトリック平和旬間に合わせて、今月の意向を「平和の実現」とし、「戦争のための武器を捨て、世界の平和と安定のために尽くすことができますように」と祈るように奨めています。武器を持たない、武器をつくらないことができれば、戦争への道はおのずと閉ざされます。しかし、統計が示すように軍備拡大の動きは留まるところを知りません。
 かつてアメリカ合衆国とソビエト連邦との間の冷戦が雪解して、軍縮の気運が高まり、核兵器の削減も実現した歴史はありますが、世界の情勢は、新たに中華人民共和国の台頭を見て、再び緊張が続くようになっています。ですから軍縮に向かうベクトルはマイナスと言わざるを得ません。
 教会は一貫して平和を願い求め、祈りをささげてきました。祈りの力を信じて、一層平和に向けての活動を続けていくことが、切に求められています。2020年にノーベル平和賞を受賞した国連WFP(United Nations World Food Programme)は、活動のすべてを任意の支援金で賄われていて、その額は年間84億ドルに達していますが、それでも世界の軍事支出の0.4パーセントに過ぎません。この格差の膨大さに思いをいたし、私たち人類に武器を持たない時代が一日も早く実現できますようにと、祈りをささげてまいりましょう。