2021年9月  2.1.5℃特別報告書
 「世界の平均気温は産業革命前と比べてすでに1℃上昇しており、もし2018年の活動状況が続けば、早ければ2030年にも平均気温は1.5℃、2100年までには少なくとも3℃上昇する。」これは、標題に掲げた「1.5℃特別報告書」が示している信頼性及び妥当性を担保した科学的な結論として、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2018年10月に韓国の仁川で開催した第48回総会で受諾されたものです。
 今年に入ってからも、世界各地で異例の高温や大規模な嵐、森林火災、干ばつ、熱波、洪水など、極端な現象が目立ち始めてきました。その原因は、地球の温暖化にあって、大気中に放出されるCO₂(二酸化炭素)の量を削減することのほか、気候変動を抑制する手立てがないことが認識されるようになったのです。日本は、今年4月の気候変動サミットを受けて、2030までに2013年比で温室効果ガスの排出を46パーセント削減し、2050年までに実質的にゼロにするゼロエミッション(何も排出しない)という目標を発表し、5月26日に改正地球温暖化対策推進法が可決成立しています。アメリカも、バイデン大統領はパリ協定への復帰を表明し、日本と同じように2050年までのゼロエミッションを発表しましたし、中国も2060年までの脱炭素化を宣言しています。
 もし、各国が掲げた目標が達成できない場合には、最も恐ろしいシナリオとして「ホットハウス・アース(温室地球)」という現象が起こることも想定されました。永久凍土が大量に融解し、広範囲にわたって森林は死滅して、温暖化がドミノ倒しで加速されて、歯止めがきかなくなります。気温は一気に5℃上昇し、海面は6~9メートル上昇、珊瑚礁や熱帯雨林は失われ、地球上のほとんどの場所が居住不可能になるというシナリオです。気温上昇が2℃を超えれば、このシナリオへ突入するといった予測も立てられています。
 CO₂の削減は、もはや目標ではなく、達成しないと地球が破滅に向かうほどの重要課題なのです。日米、そして中国の真剣な取り組みにも、その危機意識が現れています。もし、シナリオどおりに事が運んでしまった場合には、生命全体が滅亡する事態にもなりかねません。教会が今月掲げているすべてのいのちを大切にするという意向を心に保ちながら、CO₂の削減に一人ひとりがどのように関わることができるかを思いめぐらし、その一つでも実践するように努めて、日々を過ごしてまいりましょう。