2021年10月  5.霊性・共同体・使命
 今月は、福音宣教を志して過ごしてきましたが、キリストの弟子として日々の生活を整えるポイントを整理しておきましょう。
 まずは霊性です。この言葉をどのように理解すべきかについて、さまざまな議論がありますが、ここでは、祈りを通して神と対話することと捉えることにいたしましょう。祈りは、自分の心を相手の心に重ねて、自分の思いを伝え、相手の思いを感じ取る、目に見えない営みです。私たちは日々、神の心に自分の心を重ねて祈りをささげています。神とのかかわりがいつもうまくいっているとは限りません。うまく心を開くことができなかったり、神からのメッセージを何も感じなくなってしまったり、極端な場合は神を信じることができなくなってしまうこともあるのです。このような状態を「霊的な荒み」と言いますが、時が来れば必ずこのかかわりは改善されて、「霊的な慰め」に導かれますから、以前の神とのかかわりがうまくいっていた時の気持ちを味わいなおして、その時を待つようにいたしましょう。
 次は共同体です。キリストの弟子たちは、心を一つにして祈り、すべてを分かち合って生活していました(使徒言行録2・43-47)。また、人々にキリストの教えを伝える時にも、一人ではありませんでした。ペトロとヨハネが神殿の門で足の不自由な男から施しを乞われた時『「私たちを見なさい」と言った』(使徒言行録3・3)と記されています。共同体のきずなをわかりやすく表現すると「あなたの苦しみは、私の苦しみ。あなたの喜びは、私の喜び」という関係がそれぞれの間に結ばれているということができるでしょう。つまり、愛し合う関係が張り巡らされている人々の集まりなのです。だからこそ、足の不自由な男の足やくるぶしがしっかりして、躍り上がらせるほどの喜びの気持ちが伝わったのでしょう。身近な人たちとの間に、使徒たちの共同体のような関係を培うことができれば、生活は豊かになり整ってくることを経験できます。
 最後は使命です。これは、仲間とともに祈りの生活を続けていくうちに、神から示される生き方の指針とも言えるでしょう。御国の建設のために、あなたにこれを頼みたい、あなたにこれを託したい、と神が示してくださる指針が、一人ひとりに与えられる使命だと捉えることができます。私たちの命が神の栄光と賛美のために役立つようになるための指針です。
 ここに掲げた3つの要素、霊性・共同体・使命をバランスよく保ちながら、キリスト者としての日々の生活を整えてまいりましょう。