2021年11月  2.うつ病
 教皇は「うつ病」を世界共通の意向として取り上げ、「うつ病や燃え尽き症候群に苦しむ人々が、支援を受け、生活を取り戻す光を見いだすことができるように」とも祈ることを奨めています。教皇が意向として特定の病について言及することは、極めて希なことですので、うつ病の原因となる睡眠不足や過労が、世界で共通に解決しなければならない課題として存在していることを、端的に表していると言えるでしょう。
 「一日中気分が落ち込んでいる、何をしても楽しめないといった精神症状とともに、眠れない、食欲がない、疲れやすいなどの身体症状が現れ、日常生活に大きな支障が生じている場合、うつ病の可能性があります。うつ病は、精神的ストレスや身体的ストレスなどを背景に、脳がうまく働かなくなっている状態です。また、うつ病になると、ものの見方や考え方が否定的になります。」これは厚生労働省の「みんなのメンタルヘルス」というウェブサイトに示されているうつ病についての最初の文です。そして「うつ病かなと思ったら、自己判断をせずに、総合病院の精神科や心療内科、精神科のクリニックなどに相談しましょう。」という呼びかけに続いています。
 うつ病かな、と思うことがあったならば、すぐに医師に相談することがいちばん大切です。幸いに、うつ病は自覚症状があり、その状況を自分で判断できる特徴があります。精神科医を訪ねることに抵抗があるようでしたら、内科医でも、あるいはかかりつけの医師でもかまいません。今日ではうつ病に効果がある「抗うつ剤」が開発されていますので、医療につなげることができれば治癒への道は開けるでしょう。しかし、うつ病の状態を放置しておけば、自らの命を絶つような最悪の事態も起きかねません。
 もう一つ、重要なことがあります。「うつ病」を予防する生活習慣を身につけることです。教皇もビデオメッセージの中で強調していますが、過労が続くことを避けることが第一でしょう。「ここでひと踏ん張り」という場面は、生活の中で生じることは否めません。しかし、それが常態化することが問題なのではないでしょうか。充分に休養する。精一杯働いた後は、よく食べ、よく寝て、心と体を回復させる努力が必要となります。
 また、この「きょうをささげる」の運動にあるように、一日を丁寧に振り返って、その一日の嬉しかったことも悲しかったことも、楽しかったことも辛かったことも、すべて感謝のうちに神にお返しして、「朝の目覚めのときは、生まれたときと同じ真っ新(まっさら)な心をいただくことができるように」と祈り、睡眠に入ることも、疲れとストレスを翌日に持ち越さないために、とても役に立ちます。
 うつ病の予防に思いをいたしながら、この一週間の日々を、大切に丁寧に過ごしてまいりましょう。