2021年11月  4.うつ病と自助グループ
 今月の教皇の意向に掲げられた「うつ病」は、どこからどこまでを病気とするのか、境界線をはっきりと定めることが難しい病気です。また、その症状が、長期にわたって継続する障害にあたるかどうかの判定も微妙なところです。さらに、一生のうちにこの病気にかかる人の割合は他の精神疾患に比べて高く、100人に6人程度で推移しています。生涯の罹患率が高いことで「心の風邪」といわれることもありますが、風邪よりもずっと重大な病です。
 教皇は意向の中で、うつ病の人々への「支援」にも触れています。加重な労働を避け、睡眠不足などに配慮して環境を整え、ゆっくりと身体と心を休めることができるような配慮が必要でしょう。そして、医療へとつなげる手伝いも欠くことができません。
 同じ状況に置かれた人どうしがそれぞれの辛さや体験を分かち合い、状況を改善させた体験を交換し合うことで問題解決につなげようとする、ピア・カウンセリングがあります。カトリック教会での障害者運動でも「障害について誰よりよく知っているのは障害を持ったその人自身」という考えのもとに、ピア・カウンセリングのアイディアが取り入れられた自助グループが生まれました。その一つに心の病の方々が集うグループとして「オリーブの会」があります。定期的に集まって、互いの体験を分かち合うささやかな集いですが、当事者にとってはたいへん有意義な集まりです。当事者と世話役の人のほかは分かち合いに参加しないといった細かな配慮もされています。また、障害を持つ人の家族が分かち合う集いも並行して行われることもしばしばです。カトリック障害者連絡協議会(カ障連)に問い合わせることで、詳しい情報を手に入れることができるでしょう。
 病気の苦しみや不安な気持ちは、健康な人にはなかなか理解してもらえないものです。ましてや、発熱や下痢、痛みなどが伴わない、外見からは病気には見えない心の病の場合には、ただ怠惰でやる気がないだけだと思われてしまうこともあります。うつ病という心の病を持った人をどのように支援できるか、なかなか難しい課題ですが、このような自助グループの存在を紹介することも、一助となるに違いありません。
 うつ病、燃え尽き症候群の苦しみの中にある人の心に寄り添い、互いに支え合うことができる人間関係を構築して穏やかな日々を過ごせるようにと祈りをささげながら、自分にできる支援について思いめぐらす一週間といたしましょう。