2021年12月  3.心のリセットボタン
 「きょうをささげる」の「一日を閉じる前に」にしたがって一日を振り返るときには、その日の霊的な営みの締めくくりとして、心に浮かび上がったその日の痛みや苦しみを、すべて神にお返しします。また、自分自身の至らなさ、あるいは悪のいざないによって生じてしまった過ちも、すべて神に引き取っていただきます。
 心の中に残っているネガティブな感情だけではありません。大切に残しておきたいその日の喜びや幸せといったポジティブな感情も、感謝のうちに潔く手放して、すべて神にお返しします。そして祈ります。「これから私は眠りにつきます。眠っている間に、私の心と体に触れて癒しを与えてください。明日の朝、目覚めたときには、穢れのない生まれたときと同じ清い心と体をいただいて、新たな一日を迎えることができますように。」と、心のリセットボタンを押して、眠りにつくようにしてみてはいかがでしょう。
 私たちは様々な電子機器に囲まれて生活しています。パソコンも時計もスマートフォンも、さらには血圧計や万歩計までも、エレクトロニクスの技術が駆使されて、便利に使えるように工夫されています。そのような電子機器には、必ずリセットボタンがあります。機器の状態がおかしくなったときには、「再起動」というボタンを使って、原状復帰をすることができますが、それでもうまくいかないときには、いよいよリセットボタンを押すほかにありません。そのボタンを押すと、製品が工場から出荷されたときの状態に戻すことができますが、それまでその機器を使って蓄えてきたデータはすべて消えてしまいます。ですから誤ってリセットボタンを押すことがないように、つまようじの先が入るくらいの小さな穴の中にそのボタンが組み込まれているのです。
 心のメモリーに蓄えられた様々な思いを、リセットボタンを押して消し去ってしまうことに、大きな不安と抵抗があるでしょう。苦しみや悲しみは、引き取ってくださるならば喜んで差し出しますが、喜びや楽しさは、大切にしまっておきたいと思ってしまいがちです。しかし、神からいただいたその日をすべてその日のうちに神にお返しすることが、昨日よりも今日、今日よりも明日、よりキリストに近く生きる道につながるのです。
 主の祈りでは「日ごとの糧を今日もお与えください」と唱えます。み言葉には「明日のことは思い煩うな」とあります。一年を締めくくるこの時期に、その出来事をすべて感謝のうちに神にお返しする習慣を身につけて、クリスマス、そして新年を迎える準備といたしましょう。