2021年12月  5.ゲノム解析とカテキスタ
 世相はクリスマスから年末年始のあわただしさに一変しましたが、新型コロナウイルスの新しい変異株の脅威が、少しずつ日々の生活に迫ってきています。万全の対策をとって、次の大流行の波を最小限に留める努力を怠らずに、日々を過ごしてまいりましょう。
 ところで、イエスの誕生日は、12月25日かどうか、歴史学上ははっきりとしていません。昼の時間が最も短い冬至を境に、新しい喜びの日々が再び始まることから、救い主の誕生がこの時期に定められたという説もあり、主のご降誕を祝ったのは「主の公現」の日(2022年は1月2日)ともいわれています。このことを考慮すると、神がどれほど力のある方なのか、どれほど慈しみに満ちている方なのかを、精いっぱいの知恵を結集して、今日の典礼の暦、また信仰の体系が造られたことが理解できます。
 クリスマスにちなんで、たくさんの子どもたちはマリアの受胎告知の物語やベツレヘムの馬小屋でのイエスの誕生を学びます。学んでいる子どもたちは、生命体の構造が解明されて、ゲノム解析という手法で遺伝子の配列を調べると、その進化の歩みを把握することができるようになった時代に生きています。
 福者ユスト高山右近は、追放されてフィリピンでその生涯を閉じましたが、その墓がどこにあるのかを調査するにあたって、墓地の土の中に日本人特有の遺伝子を含んだ骨が混じっていないかどうかを解析した経緯がありました。マニラのイエズス会の関係の墓地に埋葬されたことは文書から明らかになっていますが、第二次世界大戦でその墓地が破壊され、その墓地に埋葬されていた方々の骨を集めて、マニラ郊外の修練院と黙想の家があるノヴァリチェスに移設されたことが分かっていました。そこで、列福にあたって遺伝子の調査を行って高山右近の墓に間違いないかを確かめようとしましたが、残念ながらそのような結果は得られませんでした。結果はともかくとして、現代の科学は、生命の神秘のヴェールを少しずつ取り除いています。
 マリアは聖霊によって男の子を宿したという説明は、今の時代に育っている子どもたちの知的好奇心を満足させられるものではないかもしれません。イエスが水の上を歩いたり、5つのパンと2匹の魚で5000人もの飢えが満たされたりした聖書の物語から、いつくしみ深く一人ひとりを愛してくださっている神の存在を、どのように説明したらよいのでしょうか。カテキズムも大きな曲がり角に来ています。
 教皇は、「神のことばを告げ知らせるために召し出しを受けたカテキスタのために祈る」ことを呼び掛けています。神の慈しみを子どもたちに伝えるために、この召し出しをいただいたすべての方々に、聖霊がたくさんの気づきを与えてくださるようにと、祈りをささげてまいりましょう。