2022年1月  1.現代世界憲章
 新しい年を迎えて、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが一日も早く終息し、人類への脅威が取り除かれますようにと、引き続き祈りをささげてまいりましょう。
 教皇は2022年の最初の意向として「人類の真の友愛」を取り上げ、「一人ひとりの権利と尊厳が認められますように」と宗教の枠を超えたすべてに人のために祈るように招いています。この意向は、1965年12月7日に、第2バチカン公会議の最後の公文書として発表された「現代社会における教会に関する司牧憲章(現代世界憲章):カッコ内は通称」の精神に通じています。人類が手を携えて解決しなければならない課題が山積している今日、まさに宗教、文化、国家を超えた「人類の真の友愛」が求められています。この憲章では「教会の外に救いはない」という教えを取り下げ、「神の恵みはすべてに人に注がれている」と宣言しました。
 第2バチカン公会議は、アジュルナメントを目的とし、足掛け4年の歳月を費やして行われ、カトリック教会の刷新をもたらしました。アジュルナメントとは、現代化、今日化という意味で、社会の動きに大きく後れを取ってしまった教義を、現状に対応できる姿に変革するものとなりました。公会議前の教えでは、カトリックの洗礼を受けないまま亡くなると、決して天国には入れないとされていたので、日本の守護聖人で日本にキリスト教を伝えた聖フランシスコ・ザビエルは、インドのゴアで宣教しているときに、たくさんの善良な人々が天国に入ることができるようにと、1日に3000人もの人に洗礼を授けたといわれています。ところが、公会議の後に同じインドで、路上で死にゆく人を看取ったマザー・テレサは、その人の信仰を尋ねて、一緒にその宗教の祈りを唱えました。
 このような大きな変化をもたらした公会議は、全部で16の公文書を発表しましたが、重要な4つの文書には「憲章」という名前が付けられています。世界中でラテン語だけで行われていたミサの言語を、その国の言葉でもすることができるようにはっきりと示した「典礼憲章」、教義全体について見直した「教会に関する教義憲章(教会憲章)」、聖書についてのとらえ方を改め、祈りの重要性を確認した「神の啓示に関する教義憲章(啓示憲章)」、そして、全部で93項に及ぶ最もボリュームの大きな「現代社会における教会に関する司牧憲章(現代世界憲章)」です。
 「現代世界憲章」の序文は「教会と全人類家族との親密なきずな」と題して、すべての人に救いが約束されていることを述べています。このことを踏まえて、教皇の意向の「人類の真の友愛」を心にとめながら、新しい年の日々を過ごしてまいりましょう。