2022年2月  3.「Y2」(第二の優先課題)
 教皇の意向に示されている修道女や女性の奉献生活者は、通常、修道会や使徒職団体が営む事業体で働いています。病院や診療所などの医療事業、幼稚園や学校などの教育事業、高齢者施設や障碍者施設などの福祉事業など、その領域は多岐にわたっており、このような活動を行う奉献生活者のほかに、専ら祈りに励んで、愛に満ちた平和で心豊かな社会になるようにと、修道院の中で観想に献身している方々もいます。いずれにせよ、それぞれが個人として、また会としていただいている使命に自らをささげて、「御心が地にも行われますように」と励んでおられます。
 このような奉献生活者の働きは、教会の宝であり証しです。そして、エクレシアと呼ばれるキリスト者の集いとしての教会の、重要な構成要素でもあります。それぞれの社会のニーズに応えて最も必要とされている人々に自らをささげる姿勢は大切にされなければなりませんが、教会全体の働きの中で、キリストを伝えるという福音宣教の大きな使命の一端を担っていることを忘れてはなりません。
 カトリック教会は、1984年に、「日本の教会の基本方針と優先課題」を司教団の名前で発表しました。基本方針を簡潔に述べるならば、社会の福音化、つまり、この社会をキリストのまなざしにかなうように変革していくことと、直接宣教、つまり、その(社会の福音化)ために一人でも多くの人を洗礼によって教会に招き入れることの二つです。その後教会からは新たな基本方針は発表されていませんので、2022年の今日でもこの方針が生きていると理解してよいでしょう。
 その時に同時に発表された優先課題は、3つありました。第一は、宣教共同体です。一人でバラバラに基本方針に従って行動するのではなく、喜びも苦しみも分かち合いながら、共同体として推進していくことが確認されました。第二は、修道会、宣教会や諸事業体との協力です。優先課題の2ですから「Y2」と呼ばれていました。第三は、福音宣教のために全国規模での会議を開催することでした。
 教区長である司教、小教区の責任者である司祭、そして、一人ひとりの信徒とつながる教会のヒエラルキーは、2000年を越えて続いてきた普遍教会と地域教会をつなぐ縦糸として理解される一方、修道会、宣教会や諸事業体は、神からいただいた固有の使命を果たす横糸として理解されます。この縦糸と横糸が織りなす布は、横糸と縦糸のバランスが整っていれば美しい布を作り出すことができるはずです。そしてその布を切り裂いて、最も痛みを覚えている人々の傷口に当てて、神からの癒しの手助けをする働きをするのでしょう。
 私たち一人ひとりも、このような日本の教会全体の枠組みの中で、教皇の意向のように、奉献生活者が「現代のさまざまな課題について新しい対応を探し続ける」ことができるようにと祈りをささげ、またその活動を支えてまいりましょう。