2022年4月  4.ワクチン格差
 私たちの地球が、新型コロナウイルス感染症のパンデミックに見舞われてから、すでに2年が経過しています。ウイルスの生態学的特性からすると、変異を繰り返して、毒性は弱くなり、一方で感染力がより強くなったものに置き換わる傾向があります。そのこともあってか、世界の感染者数の累計はすでに5億人を突破しました。
 ウイルス感染症に対抗する人間の知恵は、ワクチンと治療薬です。幸いにして、この両方の開発が進み、日本では重症化の危険が高い高齢者から順にワクチン接種が進み、3回目の接種を済ませた人の比率は45%、2回目は80%ほどに達しています。重症者は減少しているものの、感染者数は高止まりの状況の中で、ワクチンの効果は評価されているとみられています。
 ところが、世界に目を向けると、ワクチンの供給が公平公正になされていないことが目に留まります。たとえば、エチオピアに届けられた国民一人当たりのワクチンの量は、日本の18分の1です。この格差は最貧国だけの問題ではありません。世界規模でともに手を携え、パンデミックの終息に取り組まなければならないのです。
 さらに、この状態は医療従事者に危機的状況をもたらしています。少し古い統計ですが、2020年1月から2021年5月の間に、全世界で約8万人〜18万人の医療従事者が、新型コロナウイルス感染症で死亡したと推定されています。この時点でアフリカにおいて、ワクチンを接種した医療従事者は10人中1人にも満たないといわれています。また、アフリカではワクチンばかりかPCRの検査薬も限られているため、実際はずっと多い可能性があるでしょう。
 教皇は、「最貧国で奉仕する医療従事者が、政府や地方自治体から適切な支援を受けることができますように」と意向を掲げています。政府や自治体の財政支援ばかりに頼っていても、この格差のさらに外には、制度的な枠組みから外れている「周辺に追いやられてしまっている人々(marginalized people)」が常に存在していることを忘れてはなりません。そこに手が届くのは民間のボランティア組織で、その活動のほとんどは寄付金によって賄われています。祈りをささげることはもとよりですが、復活節を迎えるこの時、精いっぱいの献金をささげるように心がけましょう。