2022年4月 5.いのちをかけて |
戦闘地域で従軍することは、常にいのちがけです。自明のことですが、自分が殺されるかもしれない状況の中で、敵を殺すために武力を行使するのです。尋常な精神状態にあれば、人が人を殺(あや)めることなどできません。人間としての素直な感情を押し殺す狂気が巻き起こるので、心の抵抗を感じることなく人を殺し、遺体をぞんざいに扱うなど、非人間的な行為がいともたやすく行われるのです。 戦争は狂気です。戦闘命令が下ると、人間的な価値判断を停止して人殺しができるようにと、兵士は訓練されます。そして戦闘地域に赴けば、敵もそのような精神状態で向かってきますから、その人を殺して、自分のいのちを守るのです。 いのちをかけていのちを守る人々がいます。私たちが意向として掲げ、祈りをささげている医療従事者です。ウイルス感染症の患者のいのちを救う営みの中で、自らも感染していのちを落とした医師や看護師たち、ロシアとウクライナの間で行われている戦争のただなかに赴き、いのちがけでけが人や病人の世話をする医師がいます。 国境なき医師団の日本人医師であるMさんは、3月19日に日本を出発し、ウクライナ入りしました。派遣されたのは、東部の激戦地マリウポリから約240km離れたドニプロとザポリージャです。救命救急医・外傷外科医でドクターヘリやドクターカーによる病院前診療と災害医療が専門です。「家族の反対はありましたが、私は救命救急医という道を選んでいますので、『行かない』という選択肢はありませんでした。今まで私は、人生のいろんなポイントで人に助けてもらっているので、それを返さない理由もないですし、そのためにトレーニングをしてスキルを磨いてきたので、それは日本だろうと世界だろうと必要であれば対応します」とインタビューに応えています。 十字架につけられたイエス・キリストは、いのちをかけて人類を罪から救うという使命を果たされました。そして、復活して神の栄光をあらわされました。私たち一人ひとりは、それぞれ個別の使命に召し出されています。いのちをかけて、とはいかないまでも、いのちを尽くして、与えられた使命に生きることができるよう心掛けてまいりましょう。そして、いのちをかけて医療に従事する方々のために、祈りと犠牲をささげて過ごしてまいりましょう。 |