2022年5月  2.周縁化とは
 日本の教会は、「困窮者との連帯」を意向として掲げています。説明文には、「周縁に追いやられた人々」と、困窮者の状態を表現しています。この言葉遣いは、marginalized(マージナライズド)の英語を訳す際に、それにあてはまる日本語が見つからなかったがゆえに、用いられてきた背景がありますが、最近は「周縁化」という用語をあてはめることが多くなってきたようです。英語の辞書を見ても、「社会の主流から取り残された、社会的に無視された、周縁化された」という日本語の訳が書かれるようになっています。
 英語の語源は、marginという「余白」を意味する言葉です。ワープロの用語で、「右マージン」「左マージン」など、余白の幅を指定するときに用いるコマンドです。そのことから周縁化の意味を考えると、社会という人間のきずなの枠外に追い出された、つまり、人間として扱われていない人々を指していると理解されます。
 人間としてこの世でいのちを授かったすべての人は、人間の尊厳が保障されるはずです。では何故、人間の枠の外に置かれてしまうようなことが起こるのでしょうか。ヒントは説明文の初めの「経済的な格差が広がる」にあります。経済活動は、私たち人間が、いのちを長らえていくための衣食住の確保に、欠くことができない活動です。しかし、現代社会はその仕組みを資本主義体制に依拠していますから、効率の論理によって活動の良し悪しが決められます。いかに生産性を高くするか、最小の投入(インプット)で、最大の成果(アウトプット)をもたらすかといった論理を進めていくと、財の生産にプラスにならない物も人も、全く不要になり、不要どころか、マイナス、つまり重荷になってしまうのです。ですから、負荷になるものは枠の外に追い出される力が働きます。
 すべての人の尊厳を保障する社会では、福祉の論理によって良し悪しが決められます。効率の論理のもとでは、いちばん速くしかも上手にできる人を基準としているのとは対照的に、福祉の論理ではいちばん遅い下手な人に基準がおかれています。そのようにしないと、遅れている人は切り捨てられ、やがてはいのちの危機にまで及んでしまうからです。
 今月の意向にあるように、効率の論理による経済優先の社会にあって「周縁化」された人々と連帯し、支援していくことができるように祈りをささげましょう。そしてさらに、経済的な格差が広がらない社会へと舵を切るための知恵が授かりますようにと祈ってまいりましょう。