2022年5月  3.イエスが何を望んでいるか
 教皇は今月の意向「信仰豊かな若者」について語るビデオの中で、「イエスがあなたに何を望んでいるかを識別し」、聖母マリアに倣ってキリスト者として生きてほしいと呼びかけています。このメッセージの中に、とても大切な二つの要素を見出すことができるでしょう。一つは「マリアに倣う」、もう一つは「識別」です。
 マリアは、神から言葉をかけられた時に、まず「はい」と応え、そして思いめぐらします。「フィアット」、日本語では、ぜひともそうあってほしいと望む心を表す「なれかし」という言葉でその姿勢が表されています。マリアは、受胎告知の場面で天使から告げられた神の言葉に対して「お言葉どおり、この身に成りますように」と応えました。マリアに倣って、神からの呼びかけに対していつでも「はい」と応えることができるようにと、若者たちを支えてまいりましょう。
 もう一つの識別ですが、一般的な言葉としては、事物の種類や性質などを見分けることを指し、色を識別する、個体識別、のような使われ方をします。教会で用いる場合は、霊の動きを識別するという意味合いが加えられます。ロヨラの聖イグナチオは、人の行動を促す二つの力、良い霊の促しと、悪い霊の促しのどちらが働いているかを、祈りの中で吟味して判断するようにと奨め、それは日本語に翻訳する際に「識別」ではなく「霊動弁別」と訳されたこともありました。
 教皇のビデオで「イエスがあなたに何を望んでいるかを識別し」と表現されているときには、この霊の動きの識別という意味が含まれています。ですから、自分に与えられた固有の使命、固有の召命を識別すること、と読み替えてもよいでしょう。もちろん、イエスの望みを知ることは簡単ではありません。自分の願いや思いを神に伝え、神の願いや思いを聴く、そんな双方向のコミュニケーションを心掛けて黙想することで、小さな気づきが積み上げられて、「これが私の使命だ」と確信できる恵みが訪れるのでしょう。
 若者たちが深い祈りに導かれ、イエスのメッセージを聴き取ることができるように、私たちも心を合わせて、神との対話である祈りを重ねてまいりましょう。