2022年7月  2.日本の社会的孤立
 日本の教会は意向に「社会的孤立の予防」を掲げ、「人とのきずなの中で生きる喜びを分かち合うことができますように」と祈るように招いています。そこで、日本における社会的孤立の実情を概観することにしましょう。
 日本では、高齢者の一人暮らしが、もっぱら社会的孤立として問題化されてきました。1970年代前半に始まった雇用形態の変化と核家族化の進展によって、高齢者の単独世帯が増加したことに加えて、地縁、血縁、社縁などの相互扶助システムが脆弱化たことが背景となっていると分析されています。また「孤立」はどのような状態を指すのかというと、「家族、友人、近隣の人々などとの交流や接触がない、もしくは乏しい」ことで、いわゆる「ひとりぼっち」といった孤独感とは区別されて用いられています。
 少し古い統計になりますが、2005年にOECD(経済協力開発機構)が行った調査で、友人や同僚、地域のコミュニティなどとの交流が「ほとんど無い」あるいは「無い」と答えた人の割合が、日本は20カ国中トップで、15.3%でした。この調査では、「宗教観の違い」を要因の一つとして分析していますが、隣国の韓国は7.5%で日本の比率の半分ほどで、順位も13番目であり、日本の次は14.1%のキリスト教国メキシコでしたから、一概に宗教観が影響しているとも思えません。むしろ、「お世話にならない」「迷惑をかけない」生き方が美徳とされる文化の中で、実際には悩み事を誰かに相談したいと思っても、話すことができる人が見つからないのでしょう。
 「無縁社会」という言葉も2010年にNHKが特集番組を放映したことから頻繁に使われるようになりました。また、阪神淡路大震災以降、仮設住宅で独居の高齢者が誰に看取られることなく自宅で亡くなることが頻繁に起きるようになって「孤独死」という言葉も使われるようになりました。社会全体が、このような方向へと動いている中で、いわゆる生活の基礎となる共同体の紐帯が弱まっていますので、新しい関係を基軸とした共同体の創設が望まれています。高齢者が集うデイケアの場が、本来の福祉施設としての枠を超えて、仲間づくり、そして地域のボランティアとのかかわりから生活の相互扶助の場としても発展していった先行例は、孤立化社会に希望の光を注いでいます。
 教会は、このような新しい共同体的紐帯の可能性を秘めています。東日本大震災の後に復興支援のベースとして設立された施設は、社会的孤立をなくすことにも、多大な貢献をしました。人との交流が途絶えてしまうことのないように、私たち一人ひとりも周囲で暮らす高齢者に心を配りながら、日本の教会の意向に心を重ねて、この一週間を過ごしてまいりましょう。