2022年8月  1.戦闘の舞台がヨーロッパに
 毎年、日本の教会は8月の意向のテーマを平和に設定し、特に6日の広島被爆の日から始まり15日の終戦記念日(敗戦の日)に終わる「日本カトリック平和旬間」の間、心を合わせて二度と戦争の悲劇が起きないようにと、ともに祈りを捧げてきました。今年は、いまだに戦闘が続いているミャンマー、シリア、パレスチナ、アフガニスタンの4つの国と地域を掲げて、平和と安定がもたらされますようにと祈るように勧めています。
 「きょうをささげる」の教皇の意向が発表されるのは前年の1月です。そして、その内容を心に留めながら、日本の司教協議会は毎月の日本の教会の意向を立案し、6月の常任司教委員会を経て発表します。ですから、アジアの4つの国と地域を掲げたこの意向は、約1年2カ月前に決定したのでした。これらの地域の政情は決して安定に至っていませんが、今日世界中の祈りが注がれているのは、ウクライナです。
 とうとう戦闘の舞台はヨーロッパにも広がってしまいました。ロシアの領土拡張の企みは、ヨーロッパに向けられました。ロシアはこれまでも、シリアやアフガニスタンで、自らの正当性を主張して都市や遺跡、農地をも破壊し、そこに住む人々を利用して利益をむさぼってきました。家族の命を奪われた人たち、家も仕事も、生活もすべて奪われて難民となった人たちの悲しみや苦しみは、アジアでの戦闘によってもたらされたものと違いありませんが、矛先がアジアに向かっているうちは、世界がこれほど騒ぎ立てることはありませんでした。
 なぜウクライナへの軍事侵攻が、これほどまでに世界中の関心を喚起しているのでしょうか。それは、ウクライナがヨーロッパだからでしょう。西へ西へと続くヨーロッパ大陸の東のウクライナに戦闘の舞台が移ったことが、ヨーロッパの人々の大きな脅威となったのでしょう。
 世界中で、どれほどの人が、戦闘の即時終結を願っていることでしょう。数億人、数十億人の人の祈りの輪によっても、この戦闘は収束するところを知りません。私たち一人ひとりは、平和の実現のために、何をすればよいというのでしょうか。今月の日本の教会の意向にウクライナを加えて、平和と安定がもたらされますようにと、心を込めて祈りをささげてまいりましょう。